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【特集】【杉村富生の短期相場観測】


「日本株はなぜ、突出して売られたのか?」

●需給は全ての材料に優先する!

 年初以来、株式市場は想定外の大荒れの展開となっている。日経平均株価は昨年12月30日の1万6320円を高値に急落、今年2月5日には1万3995円、3月17日には1万4203円(ザラバベース)の安値(2点底を形成?)をつけた。下落率は14.2%に達する。

 短期間に、こんなに売り込む必要はあったのだろうか。

 ファンダメンタルズは良好なのに。いや、そんな素人みたいなことを言うつもりはない。需給は全ての材料に優先する!これが株式市場の常識である。

 マーケットでは株価不振の理由について、「ウクライナ情勢の緊迫化、中国リスク、世界景気の減速懸念など外部環境があまりにも不透明」と解説している。

●株価は賢い!正直である!

 しかし、世界景気の動向に敏感に反応するCRB商品先物指数はジリ高だし、資源大国ブラジルの株式市場は堅調である。

 さらに、S&P500指数は史上最高値圏、NASDAQ総合株価指数は2000年(ITバブルのピーク)以来の高値水準にある。このほか、直近高値に対する下落率をみると、上海総合指数は1.7%、NYダウ7.3%、ドイツDAX指数は9.0%にとどまっている。

 NYダウ、ドイツDAX指数は史上最高値比の下落率である。日経平均の下落率は突出している。おかしな話ではないか。

 古来、株価は賢い!株価は正直である!という。

 この相場格言に従えば世界景気、ウクライナ情勢、中国リスクなど外部環境の懸念材料を海外のマーケットはほとんど気にしていないことになる。

●日本固有の要因による下げ!

 やはり、日本市場の不振には日本固有の要因がある(いや、あった?)とみるべきだろう。

 すなわち、それは(1)外国人(ヘッジファンド)の売り仕掛け、(2)消費税率引き上げ(5%→8%)後の景気動向、(3)安倍首相の国家観、アベノミクスに対する不信感、(4)日銀の追加の金融緩和策の遅れ――などに集約できる。

 特に、(4)については1月22日、3月11日の日銀金融政策決定会合後の記者会見において、黒田総裁が「追加の金融緩和は必要ない」とコメント、翌日から株価が急落している。

 ちなみに、TOPIX先物を売ったのはゴールドマン・サックス、日経225先物を売ったのはクレディ・スイス、ソシエテ・ジェネラル、ABNアムロだった。完全に、仕掛けのタイミングを計って売っている。

●1997~1998年とは状況が違う!

 一方、ヘッジファンドが日本株の売り材料にした消費税率引き上げ後の景気失速説は論外である。問題にならない。1997~1998年とは状況が根本的に違う。

 当時は橋本政権が“逆噴射”と呼ばれる歴史に残る政策ミスを連発した。すなわち、消費税率の引き上げ(3%→5%)による5兆円の負担増に加え、社会保険料・医療費の引き上げ(4兆円の負担増)、超緊縮予算の編成(公共投資は4兆円の削減)を強行した。負担増は13兆円にのぼった。メガバンクの破綻処理も誤りだったと思う。

 もちろん、金融機関の不良債権処理は道半ばの状態であり、政策ミスが金融システム不安を誘発した。アジア通貨危機もあった。今回は? 政策対応は万全である。

 すでに、5.5兆円の補正予算の編成(2月6日成立)、2014年度予算が成立している。日銀は4月以降、追加の金融緩和を行うだろう。

 したがって、株式市場は早晩、底入れ→反騰態勢に転じるだろう。外国人のロングタームマネーは出動のチャンスをうかがっている。さらに、GPIF(総資産129兆円)の運用見直しが始まる。

 ここは売られすぎの三菱UFJ <8306> 、日本マイクロ <6871> [JQ]の突っ込み買いが有効と判断する。強い銘柄では日本通信 <9424> [JQ]に妙味があろう。

2014年3月26日 記

(「チャートブック日足集」No.1513より転載)
(「株探」編集部)

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