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【市況】【杉村富生の短期相場観測】


「外国人は出動のタイミングをうかがう!」


●出遅れが著しい日本の株式市場

 欧米の株式市場は堅調に推移している。NYダウ、S&P500指数、DAX指数(ドイツ)は史上最高値圏にある。

 これはウクライナ、イラク情勢、パレスチナとイスラエルの軍事衝突など地政学上のリスクを欧米の株式市場がまったく気にしていないことを意味する。

 一方、日本の株式市場はどうか。完全に、バリュー・トラップに陥っている。すなわち、株価の割安が指摘されながらなかなか上昇しない状況(ワナ)をバリュー・トラップという。

 確かに、日本株の出遅れは著しい。2014年3月期は3分の1の企業が史上最高の決算となった。5割の企業が実質無借金を達成した。すなわち、財務内容も改善されている。

●企業価値は大幅に向上しているぞッ!

 コーポレート・ガバナンスは強化されており、2014年3月期では5割もの企業が増配(復配を含む)を行った。その配当金総額は6.9兆円に達する。これは史上最高である。

 それなのに、TOPIX、日経平均株価のPERは14倍前後と、ここ数年のボックスゾーンの下限に放置されている。

 これに対し、S&P500指数のPERは17倍台にある。再三指摘しているように、日本株のPERが欧米市場のPERを下回るのは1980年以降、なかったこと。

 では、なぜ、日本株は上昇しない? まさに、バリュー・トラップではないか。

 なにしろ、NYダウはすでに、史上最高値を更新、金融危機(サブプライムローン・ショック、リーマン・ショック、南欧諸国のソブリン・リスク→ユーロ不安)前の高値(2007年10月9日の1万4164ドル)を20.5%上回っている。

 反面、日経平均株価は金融危機前の高値(2007年7月9日の1万8261円)どころか、昨年12月30日の高値(1万6291円)すら抜いていない。史上最高値(1989年12月29日の3万8915円)は雲のかなたである。これはどうしたことか。

●日本固有の悪材料はほとんど解消!

 もちろん、日本株が割り負けるにはそれなりの理由があった。長期的にはバブル崩壊、失われた20年のツケ、短期的には旧民主党政権の迷走、前任の白川日銀総裁の存在(円高、デフレを容認)、東日本大震災、超円高などがダメージを与えたと思う。

 しかし、これらの悪材料の多くがほぼ解消された。安倍政権はアベノミクスを断行、日本再生→失われた20年の克服を目指している。

 アベノミクスの第3の矢(成長戦略)は着々と実行されている。GPIFの運用体制の見直し、法人税率の引き下げ方針、スチュワードシップ・コードの導入に加え、改革の波は岩盤規制の農業、雇用、医療の分野に及びつつある。消費税率引き上げに伴う景気の落ち込みは軽微にとどまるだろう。

 外国人はこうした現状を評価し、買い出動してくるに違いない。なにしろ、日本株は国際的に出遅れている。

●元気な銘柄を攻めるのがセオリー!

 投資作戦、および物色面はどうか。基本は元気な銘柄を攻める、これに尽きる。具体的には岩谷産 <8088> 、ソフトバンク <9984> 、KLab <3656> 、化工機 <6331> などが狙い目だろう。

 ソフトバンクは8月8日に、アリババ・グループがNY市場に上場する。時価総額は20兆円を超えるだろう、といわれている。ソフトバンクはここに3割出資している。

 岩谷産、化工機は水素関連である。政府は水素社会の実現を目指している。JX <5020> もそうだが、この関連セクターは息の長い相場になろう。

 小物ではイトヨーギョ <5287> [東証2]、ビルト工 <1971> [東証2]、Fスターズ <3687> [東証M]、ペッパー <3053> [東証M]、ソフトフロン <2321> [JQG]、竹内製作所 <6432> [JQ]、ブロッコリー <2706> [JQ]などに注目できる。

2014年7月16日 記

(「チャートブック日足集」No.1529より転載)

(「株探」編集部)

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