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【市況】【杉村富生の短期相場観測】


「消費税率の再引き上げに延期論が台頭!」

●短期的には“警戒”が必要?

 諸般の情勢を分析すると、短期的には“警戒”が必要ではないか。もちろん、相場の話である。ここは定石通り、リスク・マネージメントを徹底し、キャッシュ・ポジション(現金比率)を高めておく投資戦術を推奨する。

 目先の相場について、慎重にみている背景には(1)投機筋の円売り、株式買いのポジションの膨張、(2)消費税率の再引き上げ時期に延期論が台頭、(3)先駆してきた新興市場の人気銘柄が軒並み崩れ足、(4)NY市場が高値波乱に――などにある。

 まず、為替だが、円は1ドル=106円台に突入、想定した通りの展開となっている。年末には108円絡みの水準があろう。

 ちなみに、昨年12月30日に日経平均株価が1万6291円の高値をつけた局面の為替は1ドル=105円41銭だった。現在はそれよりも円安である。しかし、株価の動きはいまひとつ盛り上がりに欠ける。

●投機筋のポジションは危険ゾーン!

 これはなぜか。ファンダメンタルズでは消費税率引き上げ後の景気の落ち込みが予想以上に厳しいうえ、7~9月期の回復が遅れていることがある。

 次の要因はヘッジファンドの円売りポジションが大幅に積み上がっていること。しかも、彼らは円売りと同時に、日経225など先物を買っている。

 すなわち、最近の株式市場は円安を好感し、株高――というパターンではない。円安→株高というより、円安=株高のパターンである。これがなぜ、ダメなのか。彼らのポジションは突然、円買い、株式先物売りに変わる。

●株高の基本シナリオが狂う!

 消費税率の再引き上げ(2015年10月からの8%→10%)が延期されそうなムードなのも痛い。

 そもそも、夏場以降の株高シナリオは年末に控えた消費税率再引き上げの最終決断(そのためには7~9月期のGDP成長率を劇的に改善させる必要→補正予算など景気対策の実施に加え、円安→株高の実現)にあった。延期論の台頭はこのシナリオを狂わせる。

 さらに、NY市場はアリババ上場があり、換金売りが増えるだろう。大物IPOではその前後に、手控えられるケースが多い。今回は2.5兆円の資金が吸収される。この影響は無視できないと思う。

 いずれにせよ、短期的には様子見が賢明だろう。その期間は2~3週間と考えている。この間は積極的な売買は自粛するのがベターである。その後は相場の方向性がみえてくるだろう。

●リスク・マネージメントの徹底を!

 もちろん、短期的には休養が必要だが、中・長期的には何の不安もない。ただ、株式投資には緩急をつけることが肝要である。現状は少なくともアクセルを踏むところではない。これが感性である。

 日経平均株価が早晩、昨年12月末の高値を奪回、金融危機前の高値(2007年7月9日の1万8261円)を目指す基本シナリオは不変である。ただ、一本調子の上げはあり得ないし、物色対象も変化する。

 相場巧者はそれを冷静に見極め、リスク・マネージメントを徹底している。これは学ぶ必要があろう。

 筆者の知る相場巧者の多くがこのところ現金比率を最大限に高め、“小物”での少玉投資(基本的に遊び)に限定している。

 具体的には今仙電機 <7266> 、宮入バ <6495> [東証2]、タツモ <6266> [JQ]、NF回路 <6864> [JQ]などがターゲットになる。

 まあ、ここはセオリーに従って、元気な銘柄にマトを絞っての小すくい作戦が有効だろう。

2014年9月10日 記

(「チャートブック日足集」No.1537より転載)
(「株探」編集部)

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