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【市況】米中合意の行方を占う試金石、米国農産物の輸出成約高に注目! <東条麻衣子の株式注意情報>

日経平均 <日足> 「株探」多機能チャートより

 前週末に米中協議第一弾合意、さらにはイギリス選挙というビッグイベントを通過したことで、株式市場では年末に向けてリスクオンの動きが強まることがあるかもしれない。しかし、米中合意を受けた13日の米国市場の展開を見る限りでは、NYダウは前日比3ドル高とほぼ変わらずで終えており、「想定の範囲内」との評価であったとも捉えられる。

 これで懸念材料が払拭されたかと聞かれれば、そうとも言えない。米国市場はやはり今後も米中関係の行方を睨みながらの展開となるだろう。現在、両国それぞれから伝わる合意したとされる内容などを整理してみよう。

【米国】
・第1~3弾で課された合計2500億ドル相当の輸入製品への25%の関税は維持
・第4弾の消費財を中心に課された1200億ドル相当に対する15%の関税を半分の7.5%に引き下げる(文書による正式合意から30日後に関税引き下げ予定)
・12月15日に課される予定だったスマホを含む1600億ドル相当の輸入製品に対する関税は見送り
・中国は年間400~500億ドルの米国農産品を購入
・技術移転問題では外国企業への強要禁止で合意

【中国】
・米国は中国産品に対して課している追加関税を段階的に取り消す
・知的財産権の保護
・技術移転問題には触れず
・金融サービス、為替、貿易拡大などの項目で合意
・中国は年間350億ドルの米国農産品を購入
・中国側の発表では『署名後は双方が協議の約束を順守し、第1段階の協議に関する内容を努力して実行することを望む』とコメント。

 また、両国は来年1月初めの署名を目指して合意文書の作成作業を進めるとしている。

 伝えられている話をベースに考えると、どちらも出方を伺っている状況に変化はなく、また米国農産品購入額や技術移転問題などを巡る両国の相違も気になる。関税を課せられる前に中国が購入していた米国農産品は2017年のピーク時でも約200億ドルであったことから、現在の中国の景気状況でそれ以上の農産品を購入できるのかについても疑問が残る。

 米国からすれば、中国が農産品購入の意思を遵守しない、あるいは米国が納得するだけの購入を行わない場合、いつでも今回引き下げを予定している関税についてそれを撤回するとも、あるいは追加関税を課すとも言える状況だ。中国の米農産物購入が両国の関係を占う試金石となるだけに注目しておきたい。

 そこで筆者は『USDA(米国農務省)の発表する輸出成約高』をチェックすることをすすめたい。この指標では、米国農産物の仕向け先別の輸出成約高を確認することができる。つまり、中国が米国の農産品をどの程度買っているかを見ることができるのだ。

 今年、トランプ大統領が中国に対し強硬姿勢を見せ始めたのは、中国による農産品購入の停滞が同統計で明らかになった後であった。直近ではトランプ大統領が、中国の主な大豆輸入先となったブラジルやアルゼンチンに対し、両国からの鉄鋼アルミ輸入品に追加関税を課すと発表したのも、中国による米国農産品の購入額が減少し始めた後のことだった。

 中国が米国農産品の購入額を増やしていくようであれば、中国側の米国に対する姿勢も合意に前向きであると読めるだろうし、逆に減らすようであれば米中間の緊張が再び高まる可能性が大きくなる。

 投資における米中リスクを回避するためにも、『USDA輸出成約高』に注目すべきではないだろうか。(週間ベースは毎週木曜日発表。年内では米国時間の12月19日、12月27日に発表が予定されている)

◆東条麻衣子
株式注意情報.jpを主宰。投資家に対し、株式投資に関する注意すべき情報や懸念材料を発信します。

■ 株式注意情報.jp http://kabu-caution.jp/
■ Twitter https://twitter.com/kabushikichui

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