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【市況】【植木靖男の相場展望】 ─ 相場の神さまの差配を注視

株式評論家 植木靖男

「相場の神さまの差配を注視」

●材料は好悪両面の顔を備える

 日経平均株価は2万7000円を前に高値圏で健闘している。米国株、欧州株も高値圏にある。すなわち、世界的に株式市場はリスクオンの状況にあることが確認されている。

 こうした世界、とくに先進国の株高現象は何によってもたらされているのか? いうまでもなく金融緩和策によるものである。直近こうした状況に、火に油を注ぐが如き事例がみられる。

 12月10日、欧州中央銀行(ECB)は資産購入額を大幅に増やした。米連邦準備制度理事会(FRB)も15~16日に開く連邦公開市場委員会(FOMC)で金融緩和を急ぐとみられ、次いで日銀も緩和を強めると予想されている。日米欧の中央銀行のスタンスは、コロナ感染拡大による景気の二番底を強く警戒しているからである。株式市場にとって一段の緩和は願ってもない朗報である。

 さて、現在の市場をどうみればよいのであろうか。振り返ると11月入り後、海外筋のデリバティブ、現物での大幅買い越しから急騰が始まっている。11月17日まで11勝1敗と駆け上がったが、その後3日下落した。通常、3日続落は上昇相場の過程ではあまりみられない。だが、24日には一気に急騰して戻り高値を更新してしまった。これで上昇相場が確認された。

 その後、経験的には5~10日間ぐらい上昇して一服するのが常。実際、8日目に2万6809円(終値ベース)で上げ止まり、その後もみ合いに入っている。では、リスクオンの地合いに変化は起きつつあるのであろうか。

 いうまでもなく、地合いが良ければいいとこ取りで好材料は素直に株高をもたらす。しかし、地合いが悪くなれば好材料も突然、悪材料に変貌するのが相場である。材料は常に好悪両面を備えている。いま好例が出てきた。日米欧の金融緩和策だ。地合いが良ければ株高をもたらすが、地合いが悪くなったら、日米欧の3中央銀行の資産残高の合計は20兆ドルを大きく上回り、08年の金融危機直後の約4倍の水準となる。このことは将来、各国にとって大きな負担となる。つまり、警戒材料に変身するのだ。

 では、地合いの変化は誰が決めるのか。いうまでもなく相場の神さまである。

●ハイテクに代わり浮上する景気敏感株

 現状はどうか。通常なら、ここからまた5~10日間くらいは上昇するのだが、仮に地合いが変化しつつあるとすれば気をつけなければいけない。

 その点では、米国のNYダウが4日の3万218ドルをいつまでも上抜けないようであれば、日本株より厳しいとみざるを得ない。なんとかクリスマス頃までは上昇基調を維持してほしいと祈るばかりだ。

 さて、物色の流れは、さすがにハイテク株に疲労の色が見え始めている。代わって浮上してきたのが景気敏感株だ。幸い、自動車の生産販売が回復を見せてきている。自動車産業の裾野は広い。株価的には出遅れているのが素材関連だ。鉄鋼化学 非鉄などの浮上が鮮明となってきた。

 たとえば、非鉄では合金鉄の大紀アルミニウム工業所 <5702> 、ワイヤハーネスの住友電気工業 <5802> などのニュースが多い。

 またトヨタ自動車 <7203> が、これまで自動車株人気を支えてきた日産自動車 <7201> に取って代わりつつあるようだ。

 そのほか、東大医学部付属病院の医師の互助組織を母体とするMRT <6034> [東証M]。コロナ感染対策関連株として注目したい。

2020年12月11日 記

株探ニュース

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