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【市況】植草一秀の「金融変動水先案内」 ―コロナの物語―

植草一秀(スリーネーションズリサーチ株式会社 代表取締役)

第59回 コロナの物語

●第4波収束の気配

 ワクチンについては賛否両論があります。それでも、短期的な社会の安定性の確保には好都合な面があるように思われます。水害を防ぐためには、幾つかの村の人々が犠牲になってしまうけれどもダムを造ることが有効であることに類似しています。通常のダム建設と異なるのは、どこの誰が犠牲になるのかが不明なことです。ある日突然、通告もなくダムがせき止められれば多数の村人が犠牲になってしまいます。ワクチン接種はこれに似ています。ワクチン接種後に死亡する事例が内外で数多く報告されています。しかし、因果関係の立証は容易でないため、ワクチン接種が原因で死亡しても損害を補償してもらえるか分かりません。

 また、mRNA型、ウイルスベクター型ワクチンの実用化は初めてなので、長期的に重篤な問題が生じるのか否か分かりません。「ワクチンが切り札」の声に踊らされて世界でワクチン接種がブームになっていますが、あくまでも自己責任での接種であることを見落としてはならないと思います。

 ワクチン接種が進展した国では、新規感染者と死亡者が減少し、マスクなどの行動規制が緩和され始めています。ワクチンによってコロナ騒動が峠を超えるのかどうか、重要な見極めの時期が近づいています。

 しかし、ワクチン接種が進展していない国ではコロナ禍が依然として重くのしかかっています。日本はコロナ被害が奇跡的に小さい東アジアに位置しているので、政策対応が適切であれば、すでに感染収束を実現できていてもおかしくはありません。しかし、現状はその真逆です。

●日本の混迷

 日本政府は感染抑制策と感染促進策との間を右往左往し、感染抑制を軸にするときにも政策対応が小出しで効果が十分に発現されてきませんでした。しかも、常に政策対応が後手に回り、問題収束どころか問題拡大を招いてしまいました。
GoTo政策で感染拡大を推進してしまったこと、水際対策が緩すぎて変異株の国内流入を簡単に許してしまったこと、緊急事態宣言を出しながら感染拡大地から全国各地へのGW(ゴールデンウイーク)観光旅行を制限しなかったことなどの失策が重なり、本年1月から3月の第2次緊急事態宣言に続いて4月から6月にかけて第3次緊急事態宣言が発出されることになりました。

 幸い、世界の感染第4波が収束に向かいつつあるため、日本においても感染拡大の収束が期待されていますが、予断を許さぬ状況が続きます。特にN501Y変異株に続いてインド由来のL452R変異株による感染拡大が生じることがないか、強い警戒感が持たれています。

 菅内閣、五輪組織委、IOCは7月23日からの東京五輪開催を強行する構えを示していますが、9万人規模の外国人が入国し、検疫や行動抑制が不完全になれば世界中から変異株が東京に集結することになりかねません。各国の実証研究では、ワクチンの有効性が非常に低いウイルス変異株も確認されています。日本のワクチン接種の進捗度は世界の最下位レベルで、この状況下でワクチンの有効性が失われてしまうとコロナ収束期待が消滅してしまいかねません。

●楽観論の広がり

 とはいえ、足下で東京、大阪の新規陽性者数が減少傾向を示していることは事実です。五輪開催が実現し、徐々に日本のコロナ禍が縮小に向かうとの期待が底流に存在することは確かです。ワクチン接種の進展によりコロナ不安が全体として縮小に向かうとの楽観論が存在していることを無視することはできません。

 日米ともにコロナ関連融資の大規模提供が続いてきましたので、金融市場に過剰流動性が供給され、この資金が資産市場に流入してきたことは間違いありません。この過剰流動性相場がいつまで続くのかを見定めることが重要になり始めています。

 最重要イベントになるのが6月15-16日のFOMCです。昨年12月、本年3月のFOMCでゼロ金利政策が2023年末まで維持されるとの見通しが示されましたが、実は内実に重要な変化が観察されました。22年末まで、あるいは23年末までに利上げがあるとの見通しを示したメンバーが大幅に増加したのです。

 米国のPCE(個人消費支出)価格指数の前年比上昇率がFRB目標の2%を超え、高めのインフレ率が年末まで持続するとの見通しが有力になっています。FRBの政策金利見通しが6月FOMCで変化することも否定し切れません。また、コロナ禍が収束に向かうことになると、コロナ禍の新しい生活様式の拡大予想を背景に押し上げられてきたセクターの株価が下方圧力を受けることも想定されます。

●大きな仮説の重要性

 株式市場が重要な曲がり角に差しかかる可能性を考慮する必要がありそうです。昨年はコロナ騒動で3割から5割の株価暴落に見舞われた市場が多かったのですが、その大半の市場で株価は下落分を取り戻しています。とりわけ、コロナ被害が軽微だった東アジアの中国、韓国、台湾では、暴落後の株価反発幅が暴落幅の2倍を超えました。

 結局、コロナ暴落は極めて一時的な株価調整に終わっていて、2009年のリーマンショック後の株価反発局面が12年間持続しているということになります。この12年間の株価上昇相場に転換点が到来するのかどうか。この見極めが重要になってきています。

 また、経済社会全体の流れがコロナパンデミックの深刻化からコロナ収束に変化するなら、株式市場での各セクターの相対株価が大きく変動することになると思われます。陰極まれば陽に転じ、陽極まれば陰に転じるのが世の常です。情勢変化を半歩先取りする視点が重要になります。

 考えてみれば、今回のコロナ騒動には不可思議な側面がいくつもあります。典型的な事例はコロナパンデミック騒動の半年前に、予行演習とも言えるシミュレーションがニューヨークで行われていたことです。WHOのマイク・ライアン氏が登場するとともにイベントの主催者の中心にビル&メリンダ・ゲイツ財団が位置しました。同財団はワクチン開発にも重要な関わりを持ってきました。大きな仮説を通して経済・金融変動を洞察することの重要性が一段と高まっているように思われます。

(2021年5月28日記/次回は6月12日配信予定)


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