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【特集】トランプ大統領来日と「北朝鮮暴発」の可能性―動乱の兆しと金の行方 <コモディティ特集>

minkabu PRESS CXアナリスト 東海林勇行

―挑発一服も「嵐の前の静けさ」発言に懸念、有事の金買いは復活するか―

 東京金先物価格は9月以降、4,586~4,721円のレンジ相場となっている。北朝鮮情勢に対する懸念を受けて値位置を上げたが、米連邦準備理事会(FRB)の利上げ見通しや米税制改革期待などが上値を抑える要因になった。また、9月15日の北朝鮮のミサイル発射以降、軍事的挑発が見られず、9月下旬の国連総会での米朝間の舌戦後には目立った応酬もなく、金ETF(上場投信)の逃避買いは一服した。ただ、トランプ米大統領が10月5日の軍高官との夕食会で「嵐の前の静けさ」と述べ、軍事攻撃に対する懸念も残り、今回は東京金の材料と当面のイベントを確認する。

●東京金は円安見通しが下支え要因

 10月22日の衆院選で自民党が圧勝した。改憲勢力が8割を占め、憲法改正に向けた大きな一歩となった。自民党は3月の党大会で総裁任期を「連続2期6年」から「連続3期9年」に延長する方針を正式決定しており、今回の圧勝で安倍首相が2018年9月の総裁選で3選される可能性が出てきた。3選なら2021年9月までの在任が可能となる。一方、2018年4月には黒田日銀総裁が任期満了を迎える。安倍政権が金融政策で手堅い運営を求めるなら、黒田総裁の続投または後任総裁が現状の政策を踏襲する人物になる可能性が高い。

 10月31日の日銀金融政策決定会合で金融政策の現状維持が賛成多数で決定された。「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」では、物価見通しを2017年度は従来の1.1%から0.8%に大幅に引き下げ、18年度は1.5%から1.4%へと小幅に引き下げ、目標とする物価2%の到達時期は「19年度ごろ」に据え置いた。物価見通しの引き下げで異次元緩和が長期化するとみられ、利上げとバランスシート縮小を開始した米連邦準備理事会(FRB)の金融政策を比べると、円安が進みやすくなる。トランプ米大統領の保護主義で急激な円安はないとみられるが、1ドル=118円台まで円安に振れる可能性がある。

●米大統領のアジア歴訪で北朝鮮情勢を確認

 トランプ米大統領は11月5~14日の日程でアジア5ヵ国を訪れる。日本や韓国、中国の訪問では北朝鮮問題が重要なテーマになるとした。米大統領のアジア歴訪を控えて西太平洋に空母3隻を配備し、北朝鮮への圧力を強化しており、北朝鮮情勢の行方を確認したい。マティス米国防長官は10月27日に来韓し、板門店の非武装地帯を訪れた。同長官は「われわれの目標は戦争ではなく韓半島(朝鮮半島)の非核化」と述べたが、ヘリコプターでソウルを含む韓国首都圏の上空を通過して、高層マンション地域や戦車陣地などを視察しており、軍事行動を念頭に置いたものとみられる。

 米大統領は今回、非武装地帯は視察せず、米陸軍基地キャンプ・ハンフリーズを訪問する。北朝鮮へのメッセージを確認したい。また、米大統領はベトナム中部ダナンで開催されるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に出席したのち、フィリピンのマニラを訪れ、米・東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議や、ドゥテルテ比大統領との初会談に臨む予定となっている。

 北朝鮮では9月の核実験後、実験場の地下坑道で大規模な崩落事故が起き、200人余りが死亡したことが明らかとなった。中国の地質学者は北朝鮮の地質学者に対し、再度実施すれば同実験場内の山が崩落し、放射性物質が外部に漏出する恐れがあると警告した。北朝鮮外務省高官は李容浩外相が先月、太平洋上で水爆実験を行う可能性を示唆したことについて、文字通り受け取るべきだと指摘した。北朝鮮は米東海岸に到達可能な大陸間弾道ミサイル(ICBM)を開発するまでは米国との外交交渉に応じる意思はないとしており、米大統領の訪韓時に何らかの挑発を行う可能性がある。

(minkabu PRESS CXアナリスト 東海林勇行)

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