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【特集】プラチナの上値圧迫するコロナ第2波懸念、タイトな需給は下支え <コモディティ特集>

MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行
 プラチナ(白金)の現物相場は、5月半ばに経済活動再開に対する期待感を受けてレンジを上放れ、3月12日以来の高値862.98ドルをつけた。ただ、買い一巡後は景気後退懸念などに上値を抑えられ、もみ合いとなった。その後、新型コロナウイルス感染の第2波に対する警戒感が出たことでリスク回避の動きを受けて戻りを売られ、5月15日以来の安値787.95ドルをつけたが、800ドル割れの安値は買い拾われて下げ一服となった。

 各国のロックダウン(都市封鎖)緩和で経済活動が再開するなか、5月の米雇用統計が予想外に改善し、米経済のV字回復に対する期待感が高まった。ただ、米連邦公開市場委員会(FOMC)では景気の先行きに対する慎重な見方から、少なくとも2022年まで政策金利をゼロ付近に維持するとの見通しが示された。

 ニューヨークの経済活動が6月8日に再開されたが、各州で新型コロナウイルスの感染者が増加し、第2波に対する警戒感が出た。ミネソタ州の黒人暴行死に対する抗議デモが全米に拡大したことも感染増加の一因となった。また、中国の北京市で新型コロナウイルスの感染増加を受けて食品市場が閉鎖されると、コロナ第2波に対する懸念が更に強まって株価が急落し、プラチナの圧迫要因になった。

 一方、米連邦準備理事会(FRB)が社債購入を発表したことや、米政権が1兆ドル規模のインフラ支出を検討していることが伝えられたことでリスク選好の動きが戻ったが、パウエル米FRB議長は慎重な景気見通しを示しており、ワクチンが開発されるまでは終息・経済活動正常化は難しく、プラチナの上値を抑える要因になるとみられる。

●プラチナは自動車販売の回復見通しなどが下支え

 中国の自動車販売が2ヵ月連続で増加したことや、米国で自動車メーカーが夏期の生産を継続する方針であることが伝えられ、需要回復期待が出ている。中国汽車工業協会(CAAM)によると、5月の自動車販売台数は前年比14.5%増の219万台となり、2ヵ月連続で増加した。ただ、1~5月の販売台数は前年比22.6%減少しており、CAAMは新型コロナウイルスの影響次第で年間の自動車販売が15~25%減少するとの見通しを示している。また、米国ではロックダウン緩和で工場が再開し、急激な落ち込みから回復しつつあるものの、今年の自動車販売は年初予想の1700万台から急減し、1260万~1400万台になると予想されている。

 17日の夕方には5月の欧州の新車(乗用車)登録台数の発表があり、欧州の販売動向も確認したい。欧州自動車工業協会(ACEA)によると、4月の欧州連合(EU26)の新車(乗用車)登録台数は前年比76.3%減の27万0682台だった。1~4月は前年比38.5%減の275万0845台となっている。

 供給面では、南アフリカの鉱山会社アングロ・アメリカン・プラチナム(アンプラッツ)の精製工場が3日、冷却装置からの水漏れによって再び停止した。同社によると修理は短期間で完了し、今年のプラチナ系貴金属(PGM)の生産見通しに変更はないとしている。また、シバニェ・スティルウォーターのルステンバーグ鉱山でスタッフ2人が新型コロナウイルスに感染し、検査を拡大すると、120人中51人から陽性反応が出た。この影響でインパラ・プラチナム(インプラッツ)が減産見通しを示すなど、南アの生産は減少しており、需給がタイトな状況に変わりがないことはプラチナの下支え要因である。

●欧米のプラチナETF残高が増加

 プラチナETF(上場投信)残高は4日の南アで21.43トン(1ヵ月前23.26トン)に減少、16日の米国で26.43トン(同23.67トン)、9日の英国で16.73トン(同15.58トン)に増加した。経済活動再開に対する期待感を受けてレンジを上放れ、テクニカル面で改善したことから欧米で投資資金が流入した。

 一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、6月9日時点のニューヨーク・プラチナの買い越しは1万9715枚となった。レンジ上放れを受けて5月26日時点で2万3023枚と3月17日以来の高水準となったが、高値での買いは続かず、利食い売りがでて買い越しを縮小した。

(MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行)

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