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【特集】7年半ぶり高値の「金」、コロナ感染拡大で逃避買いが続くか <コモディティ特集>

MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行
 金の現物相場は6月、新型コロナウイルスの感染再拡大に対する懸念を受けて堅調となり、2012年10月以来の高値1785.44ドルをつけた。米国南部で感染者が急増し、株価が過大評価されているとの見方から、金ETF(上場投信)に投資資金が流入したことが金価格を押し上げる要因になった。また、ゴールドマン・サックスが金価格の12ヵ月見通しをこれまでの1800ドルから2000ドルへ上方修正した。更にプライベートバンクが富裕層に対して金投資を助言しており、ポートフォリオ組替えの動きが出れば金は引き続き上値を試す可能性がある。

 経済活動再開を受けて5月の米経済指標が改善し、V字回復に対する期待感も出ていることは金の上値を抑える要因である。しかし、世界的な新型コロナ感染拡大が続いており、収束の兆しは見られない。ワクチンが開発されるまで経済活動の正常化は難しく、ロックダウン(都市封鎖)の再導入に対する懸念が残るとみられる。

 新型コロナの感染再拡大で今後の米経済指標の改善が遅れ、景気低迷の見方が強まれば、低金利長期化見通しが金の支援要因になるとみられる。パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長や金融当局者は、景気の先行きに対する慎重な見方を示しており、22年までゼロ金利を維持する見通しとなっている。

●新型コロナウイルスの感染再拡大で米経済指標を確認

 全米経済研究所(NBER)は今年2月に米経済は景気後退(リセッション)入りしたとの見方を示したが、ロックダウン解除で経済活動が再開され、経済指標が急改善している。5月の米雇用統計によると、非農業部門雇用者数は250万9000人増と事前予想の800万人減から予想外に増加。前月は2068万7000人減。失業率も13.3%(前月14.7%)と事前予想の19.8%から大幅に改善した。また、5月の米小売売上高は前月比17.7%増と、事前予想の8%増を上回り、1992年の統計開始以降で最大の伸びを記録した。米鉱工業生産も製造業生産が3.8%増と前月の15.5%減から持ち直した。

 ただ、新型コロナの感染拡大は続いており、世界の感染者は1000万人を突破し、死者は50万人を超えた。米南部や中南米、インドなどでも感染者が増加している。ドイツ西部の郡や中国の北京近郊でロックダウンが発表された。米国家経済会議(NEC)のカドロー委員長は全米レベルでのロックダウンはないとの見方を示したが、テキサス州やフロリダ州でバーの営業停止やレストランの入店制限強化などを実施しており、一部地域でロックダウンに対する懸念が出ている。2日に発表される6月の米雇用統計では非農業部門雇用者数が300万人増、失業率が12.5%と引き続き改善すると予想されているが、感染再拡大で夏場以降の改善が遅れる可能性がある。

●金ETFへの投資資金流入が続く

 金の内部要因では、新型コロナウイルスの感染拡大に対する懸念や株価が過大評価されているとの見方を受けてETFへの投資資金流入が続いている。世界最大の金ETFであるSPDRゴールドの現物保有高は6月30日に1178.90トンと5月末の1123.14トンから55.76トン増加した。新たな四半期を迎えており、富裕層の投資資金が流入するとみられる。

 一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、ニューヨーク金先物市場でファンド筋の買い越しは6月23日時点で25万1957枚となり、4月28日以来の高水準となった。6月9日に20万8613枚まで縮小したが、新規買いが入って再び拡大した。

(MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行)

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