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【特集】金は最高値を更新、景気回復失速の見方で逃避買いが向かう<コモディティ特集>

minkabu PRESS CXアナリスト 東海林勇行

 金の現物相場は、新型コロナウイルスの感染拡大により米国の労働市場の回復が失速するとの見方でドル安が進んだことに加え、米中の対立激化を受けて急伸し、2011年9月につけた史上最高値1920.25ドルを突破した。金ETF(上場投信)に逃避買いが入るなか、1978.62ドルまで上昇し、2000ドルを目指す値動きとなった。27日に大阪取引所に移管された 金先物も6705円と上場来高値を更新し、内外で上値を試している。欧州連合(EU)で7500億ユーロの復興基金案がまとまったことは金の支援要因である。米国で1兆ドル規模の追加経済対策が協議されている。米国では失業保険の上乗せ給付の失効が月末に迫っており、早急に対策をまとめる必要がある。目先は米連邦公開市場委員会(FOMC)があり、慎重な景気見通しが示されて、新たな措置が発表されると、金は一段高となる可能性があろう。

●米国売りのドル安なら、金は引き続き上値を試す

 ドル指数は2018年6月以来の安値93.48をつけた。米国のロックダウン(都市封鎖)が5月に緩和され、経済活動の再開により景気回復期待が高まったことや、新型コロナウイルスのワクチン開発に対する期待感から、リスク選好のドル安となった。ただ、23日に発表された米新規失業保険申請件数が約4カ月ぶりに増加に転じると、労働市場の回復が失速するとの見方からドル安が加速した。新型コロナウイルスの感染拡大が続くなか、リスク選好のドル安は米国売りのドル安に変わりつつある。今後発表される米経済指標で景気回復の失速が示されると、株安・ドル安から金に逃避買いが入って堅調に推移するとみられる。

 新型コロナウイルスの感染拡大が続き、世界での感染者数は1650万人、死者は65万人を超えた。感染者数、死者ともに米国が最も多く、収束の気配は見られない。各国でワクチン開発が進んでいるが、利用可能になるのは早くても年末とみられており、経済活動が正常化するのはかなり先の話になりそうだ。

 中国が香港の国家安全維持法を制定してから欧米諸国の中国に対する圧力が急速に高まった。トランプ米大統領は香港への優遇措置を撤廃する大統領令に署名。米政府は新疆ウイグル自治区での人権侵害に制裁を科すと発表した。また、ポンペオ米国務長官は南シナ海の中国の権利主張は「違法」と述べ、これまでの中立的な態度から変化した。さらに米国は中国のスパイ活動を指摘し、テキサス州ヒューストンの中国総領事館の閉鎖を命じた。中国も報復措置を発表しているが、11月の米大統領選を控えて米大統領の強硬姿勢は続くとみられ、両国の対立が激化すると、金買い要因となる。

●金ETFの逃避買いが続く
 金の内部要因では、新型コロナウイルスの感染拡大や景気の先行き懸念からETF(上場投信)への投資資金流入が続いている。世界最大の金ETFであるSPDRゴールドの現物保有高は7月28日に1243.12トンとなり、6月末の1178.90トンから64.22トン増加した。ドル安や各国中銀の量的緩和、マイナスの実質金利などから史上最高値更新後も投資資金が流入している。

 一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、ニューヨーク金先物市場でファンド筋の買い越しは7月21日時点で26万6436枚となり、6月30日の26万6670枚からほぼ横ばいとなった。先高感が強いなか、2月に記録した過去最高35万3649枚と比べると、買い余地を残している。

(minkabu PRESS CXアナリスト 東海林勇行)

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