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【特集】戻り高値を突破したプラチナ、ドル安・金急伸など追い風に上値をさらに伸ばすか? <コモディティ特集>

MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行
 プラチナ(白金)の現物相場は、ドル安や金急伸を受けて5月20日につけた戻り高値862.98ドルを突破すると、米国の追加経済対策に対する期待感も支援要因となって2月20日以来の高値1003.00ドルをつけた。

 新型コロナウイルスの感染拡大で米国の労働市場の回復が鈍化するとの見方からドル安が続いたことや、金に逃避買いが入って史上最高値を更新したことがプラチナ価格を押し上げた。欧州で7500億ユーロの復興基金案がまとまったことや、米国で1兆ドル規模の追加経済対策が協議されていることも支援要因となった。

 第2四半期の国内総生産(GDP)は米国で前期比32.9%減、ユーロ圏で同12.1%減と過去最大の落ち込みを記録しており、各国中銀の量的緩和と各国政府の景気刺激策が引き続き必要な状況となっている。新型コロナウイルスの感染拡大が続き、景気の先行き懸念が残ることはプラチナの上値を抑える要因だが、プラチナETF(上場投信)に投資資金が流入しており、当面は1000ドル台で上値を伸ばせるかどうかが焦点である。

 7月の米雇用統計によると、非農業部門雇用者数は176万3000人増となり、前月の479万1000人増から大幅に鈍化した。事前予想の160万人増を上回ったことでドルが買い戻されたが、労働市場の回復鈍化が続けば、ドルの戻りは売られるとみられる。

 失業率は10.2%と前月の11.1%から改善した。7月末で失業給付上乗せが失効したが、トランプ米大統領が新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)の支援策を継続させる大統領令に署名した。ただ、失業給付上乗せは週600ドルから400ドルに減額した。今後の新型コロナウイルスの感染拡大と労働市場の回復の行方を引き続き確認したい。

●プラチナは中国の自動車販売増加などが支援

 中国汽車工業協会(CAAM)によると、7月の自動車販売台数は前年同月比16.4%増の211万台となり、4ヵ月連続で増加した。新型コロナウイルスによるロックダウン(都市封鎖)の影響から回復しつつある。1~7月は前年同期比12.7%減の1273万台。CAAMは、今年の販売台数は前年(約2500万台)から10~20%減少すると予想している。

 欧米の自動車販売も減少幅を縮小し、回復傾向を示している。米国での7月のトヨタ自動車の新車販売台数は前年同月比19%減の16万9484台と減少幅を縮小した。米新車販売台数は4月から回復し、自動車大手は増産と販売店での在庫拡充を急いでいる。

 欧州自動車工業協会(ACEA)によると、6月の欧州連合(EU26)の新車(乗用車)登録台数は前年同月比22.3%減の94万9722台となった。4月は76.3%減、5月は52.3%減と減少幅を縮小している。1~6月は前年同期比38.1%減の428万1549台となった。

●プラチナETFに投資資金が流入

 プラチナETF残高は11日の米国で32.39トン(1ヵ月前28.32トン)、6日の英国で18.39トン(同16.64トン)に増加、南アフリカで19.54トン(同19.25トン)に増加した。戻り高値を更新し、テクニカル面で改善するなか投資資金が流入した。

 一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、7月28日時点のニューヨーク・プラチナの買い越しは2万2412枚(6月30日は1万5848枚)に拡大し、5月26日以来の高水準となった。戻り高値を更新し、新規買いが入った。8月4日は1000ドル達成から新規売りが出て1万9506枚となった。一方、ニューヨーク先物市場の指定倉庫在庫は引き続き増加し、実需筋の売りが出ている。7日の指定倉庫差在庫は40万9023オンスとなり、戻り高値を更新する直前の7月20日から6万4433オンス増加した。引き続き売られると上値を抑える要因になる。

(MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行)

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