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【特集】金は調整局面、量的緩和・景気刺激策に支えられ上昇基調は維持 <コモディティ特集>

MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行
 金の現物相場は8月、ドル安を受けて金ETF(上場投信)に逃避買いが入るなか、史上最高値2072.90ドルをつけた。ただ、1800ドルからの急騰で買われ過ぎ感が出るなかドル安が一服し、利食い売り主導の調整局面を迎え1866.41ドルまで下落した。その後は押し目を買われ、2000ドル台を回復したが、米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録を受けて追加緩和観測が後退すると、ドルが買い戻されて調整局面を継続した。

 高値圏で乱高下し、天井が意識される値動きである。ただ、新型コロナウイルスの感染拡大に収束の兆しは見られず、各国中銀の量的緩和や各国政府の財政刺激策で引き続き大量の資金が投入される見通しが金価格を押し上げる要因である。米10年債利回りは入札不調を受けて6月24日以来の高水準となる0.722%まで上昇したが、緩和的な金融政策で長期金利が再び低下すればドル安に振れ、金の支援要因になるとみられる。また、S&P500やナスダックが最高値を更新しており、株式市場に過熱感が出ている。金ETFに逃避買いが入れば再び上値を試す可能性が出てくる。

●金はドル安見通しが支援要因

 18日、ドル指数は2018年5月以来の安値92.13をつけた。米連邦準備理事会(FRB)の追加緩和観測の後退などを受けてドルが買い戻される場面も見られたが、低金利を長期間維持する見通しであり、再びドル安に振れるとの見方が強い。新型コロナの感染拡大が続いていることや、11月の米大統領選に対する不透明感、米中の対立もドル安要因である。

 FOMC議事録ではイールドカーブ・コントロール(YCC、長短金利操作)は現時点で正当化されないとされたが、積極的な刺激策を長期間維持する可能性が指摘された。目先は27日のジャクソンホール会合でパウエル米FRB議長が金融政策の枠組み見直しについて講演する予定である。講演の内容とドル安が再開するかどうかを確認したい。

 8月の米総合購買担当者景気指数(PMI)速報値は54.7と前月の50.3から上昇し、2019年2月以来の高水準となった。米経済は新型コロナ感染の影響で2月に景気後退(リセッション)入りしたが、ロックダウン(都市封鎖)緩和で経済活動が再開するなか、製造業とサービス業の新規受注が増加した。ただ、新型コロナ感染拡大が続くなか、米新規失業保険申請件数が再び100万件を超えるなど、労働市場の回復鈍化の見方から景気の先行き懸念が残っている。

 11月の米大統領選に向けた共和党大会が24日に開幕し、トランプ米大統領が党候補に正式に指名された。27日に指名受諾演説する。公約として、「中国に新型コロナを世界に拡散させた責任を取らせる」「中国から100万人分の製造業の雇用を取り戻す」「新型コロナのワクチンを年末までに開発」「駐留米軍経費を同盟国に支払わせる」などを掲げている。世論調査では民主党のバイデン前副大統領がリードしており、トランプ米大統領は中国に対する強硬姿勢を維持し、支持率回復を狙うとみられる。米大統領は「中国とビジネスはしなくてもいい」とも述べている。ただ、延期されていた米中の第1段階の通商合意を巡る電話会談が25日に行われており、対話は続いている。

●金ETFに利食い売り

 金の内部要因では、調整局面を迎えるなかETFから投資資金が流出し、利食い売りが出た。世界最大の金ETFであるSPDRゴールドの現物保有高は8月5日に1267.96トンまで増加したのち、14日に1248.29トンに減少した。25日時点は1248.87トンとなっており、今後の投資資金の動向を確認したい。

 一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、ニューヨーク金先物市場でファンド筋の買い越しは7月7日時点で26万7358枚と3月24日以来の高水準となったのち、利食い売りや新規売りが出て買い越し幅を縮小した。8月18日時点は22万3518枚となった。調整局面が終了したのち、どのタイミングで拡大するかを確認したい。

(MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行)

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