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【特集】金はドル高でレンジ下限付近、米FRBの低金利長期化見通しが下支え <コモディティ特集>

MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行
 の現物相場は9月、欧州中央銀行(ECB)高官がユーロ高に対する懸念を示したことや、米連邦公開市場委員会(FOMC)に新鮮味がなく、ドルが買い戻されたことに上値を抑えられた。また、欧州の新型コロナウイルスの感染拡大による先行き懸念から株価が急落し、リスク回避のドル高となったことも圧迫要因となり、8月12日以来の安値1885.35ドルをつけた。

 金は8月に史上最高値2072.90ドルをつけたのち、三角保ち合いを形成し、米FOMCをきっかけに下放れる格好となった。ただ、8月安値1866.41ドルを維持しており、下値は限られた。米連邦準備理事会(FRB)の低金利長期化見通しから金ETF(上場投信)にまとまった安値拾いの買いが入っており、ドル安が再開すれば金はレンジ内で地合いを引き締めるとみられる。

●リスク回避のドル高が圧迫要因

 ドル指数は9月1日に2018年4月以来の安値91.75をつけたのち、リスク回避の動きからドルが買い戻され、21日に6週間ぶりとなる93.78まで戻した。新型コロナウイルスの感染拡大で米FRBの低金利が長期化するとの見通しがドル安要因となった。

 しかし、ECB高官のユーロ高に対する懸念などをきっかけにドルが買い戻され、金の上値を抑える要因になった。ドル安見通しに変わりはないが、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告でシカゴ・ユーロのファンド筋の売り越しが8月25日に過去最高を記録しており、ドル売りのポジションがある程度解消されるまで積極的にドル売りに回る向きは少ない。

 パウエル米FRB議長はインフレ容認など新戦略の方針を示したが、15~16日の米FOMC後の記者会見で言及はなく、ドルが買い戻される要因となった。ただ、22日の下院金融委員会での議会証言で、新型コロナウイルスの影響から景気回復を支援するためあらゆる手段を駆使すると述べており、今後、新戦略の協議が進むとみられる。

 11月の米大統領選後に新たな措置が決定されるとの見方が出ており、米FRB議長や金融当局者の発言を確認したい。一方、10日のECB理事会後のラガルドECB総裁の記者会見で、ユーロ高をけん制する発言はなかった。ただ、ECB当局者は一段の金融緩和の余地があるとの見方を示しており、ユーロの手じまい売りを促す要因である。

●新型コロナウイルスのワクチン開発の行方なども焦点

 欧州で新型コロナウイルスの感染拡大第2波に対する懸念が高まっている。フランスの第3の都市リヨンで屋外イベントの入場者数の制限や、午後8時以降の屋外での飲酒を禁止する方針が発表された。また、スペインの首都マドリードの一部地域でロックダウン措置が実施された。英国もレストランやパブなどの営業制限を発表した。

 欧州で米株価はS&P500やナスダックが9月初めに最高値を更新したのち、景気回復の遅れに対する懸念から調整局面を迎えており、欧州の新型コロナ感染第2波に対する懸念を受けて一段安となった。一方、各国でワクチン開発が続くなか、米国で11月にも承認される可能性が出ている。ただ、トランプ米大統領はワクチンの全国民への接種は来年4月までに可能になるとの見通しを示しており、承認されても行き渡るには時間がかかる。

●金ETFに安値拾いの買い

 金の内部要因では、レンジ下限付近まで下落するなか、ETFにまとまった安値拾いの買いが入った。世界最大の金ETFであるSPDRゴールドの現物保有高は9月17日に1246.99トンまで減少したのち、21日に1278.82トンに増加した。2日で31.8トン増加しており、米FRBの低金利長期化見通しから買い意欲が強い。

 一方、米CFTCの建玉明細報告によると、ニューヨーク金先物市場でファンド筋の買い越しは9月15日時点で24万0977枚と7月21日以来の高水準となった。当面の底である8月25日時点の22万1038枚から拡大しており、先物市場でも買い意欲が強い。

(MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行)

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