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【特集】プラチナはリスク回避で売り圧力強まる、投資需要の増加は下支えに <コモディティ特集>

MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行
 プラチナ(白金)の現物相場は9月、リスク選好のドル安を受けて堅調となり、約1ヵ月ぶりの高値981.24ドルをつけた。その後は米連邦公開市場委員会(FOMC)後にドル高に転じたことや、欧州の新型コロナウイルス感染の第2波に対する懸念からリスク回避の動きとなったことを受けて急落すると、レンジ下限を割り込んで一段安となり、7月17日以来の安値827.67ドルをつけた。10月にかけては安値拾いの買いなどが入って下げ一服となり、900ドル前後に値を戻したが、米大統領の経済対策の協議打ち切りの発言をきっかけに戻りを売られた。

●新型コロナを巡る政策の行方を注視

 9月は新型コロナウイルスのワクチン開発に対する期待感などを受けてリスク選好のドル安となった。ただ、感染拡大で欧州の一部諸国で制限措置が再導入されると、第2波に対する懸念が高まってリスク回避の動きに転じた。また、トランプ米大統領も側近から新型コロナに感染し、一時入院する事態となった。症状は改善し退院したものの、完全に回復するまで先行き懸念が残ることになりそうだ。各国でワクチン開発が進んでいるが、米食品医薬品局(FDA)がワクチンの緊急承認について、厳格化した新たな基準を発表するとしていることから、11月の米大統領選前のワクチン承認は難しいとみられている。また、承認されても広く行き渡るにはかなりの時間がかかる見通しである。

 9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)では政策金利の据え置きが決定された。米連邦準備理事会(FRB)のインフレ容認や低金利長期化見通しの方針が示されており、新戦略の協議が進むことが期待された。ただ、パウエル米FRB議長の記者会見では新戦略に関する発言がなく、また、米国で追加経済対策の協議が進まなかったこともあってドルが買い戻された。ただ、10月に入りムニューシン米財務長官とペロシ米下院議長の協議が再開され、米大統領選前に合意に達するとの期待感が出たことからドル安が再開した。

 しかし、トランプ米大統領は6日、米大統領選後まで追加経済対策の協議を停止すると発表した。パウエル米FRB議長は景気の先行きに対する慎重な見方を示し、下方スパイラルに陥る恐れがあると発言している。リスク回避の動きが強まればプラチナの圧迫要因になる可能性がある。

●米自動車メーカーの生産強化などが下支え

 米自動車メーカーは、新型コロナウイルスによる大打撃からの回復が続いているとの見方を示している。第3四半期のゼネラル・モーターズ(GM)の販売は10%減少したが、業績は毎月改善した。第4四半期の販売は季節調整済みで1590万台の見通しで、第3四半期から400万台増加する見込みである。販売店在庫の再構築に向けて生産強化に動いており、プラチナ系貴金属(PGM)にとっては自動車触媒需要の回復につながるとみられる。

 欧州自動車工業協会(ACEA)によると、8月の欧州連合(EU26)の新車(乗用車)登録台数は前年同月比18.9%減の76万9525台となった。1~8月は前年同期比32.0%減の612万3852台。また、新車(商用車)登録台数は前年同月比18.0%減の12万6710台となった。1~8月は前年同期比28.2%減の104万2823台。欧州でも減少幅が縮小し、回復傾向にある。ただ、欧州中央銀行(ECB)は経済報告で、「ユーロ圏経済は景気後退から回復しているが、失業率の悪化は今後も続き、消費需要の拡大余地は乏しい」との見方を示しており、先行き懸念が残る。また、当面は新型コロナウイルス感染の第2波の影響も懸念される。

●米国や南アのプラチナETFに投資資金が流入

 プラチナETF(上場投信)残高は10月6日の米国で38.34トン(1ヵ月前37.50トン)、5日の南アフリカで19.32トン(同19.30トン)に増加、1日の英国で18.67トン(同18.73トン)に減少した。米国や南アで投資資金が流入した。一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、9月29日時点のニューヨーク・プラチナの買い越しは9824枚となり、直近のピークとなった9月15日の1万9437枚から急速に縮小した。欧州の新型コロナウイルス感染の第2波に対する懸念などを背景に売り圧力が高まった。ただ、供給不足見通しであり、割安感から安値拾いの買いが入ると、買い戻し主導で急伸する可能性も出てくる。一方、ニューヨーク先物市場の指定倉庫在庫は引き続き増加した。10月5日の指定倉庫差在庫は63万8511オンスとなり、9月高値をつけた16日から10万1650オンス増加し、実需筋の売り圧力も強い。

(MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行)

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