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【特集】金は値固め、米大統領選に向けた動きを確認 <コモディティ特集>

MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行
 の現物相場は10月、米国の追加経済対策の合意期待などを背景にリスク選好のドル安となったことを受けて堅調となり、9月21日以来の高値1932.93ドルをつけた。ただ、その後は追加経済対策の協議が難航し上げ一服となった。新型コロナウイルスの感染再拡大や米製薬大手のワクチン開発中断もリスク回避を促す要因となった。売り一巡後は追加経済対策協議の行方を横目に1900ドル前後で方向性を模索する動きとなった。

●米大統領選はバイデン優勢

 今後の金相場で焦点となるのは、短期的には米大統領選、中長期的には新型コロナウイルスがいつ終息し経済が正常化するか、である。今回の追加経済対策の協議で民主党が2兆2000億ドル規模の対策を主張したのに対し、共和党のマコネル上院院内総務はより小規模の対策を主張した。米大統領選でトランプ氏・バイデン氏のどちらが勝利するかで今後の景気刺激策の規模が変わることになりそうだ。

 11月の米大統領選の世論調査では民主党のバイデン元副大統領が優勢となった。トランプ米大統領は新型コロナウイルスを軽視し、対応を間違えたと世論はみている。目先は22日に行われる最後の米大統領選候補者討論会も確認したい。

 また、同時に実施される米上院選でも民主党が優勢となっている。米大統領選でバイデン氏勝利となれば民主党が大規模な景気刺激策を策定するとの期待感で金は再び上値を試す可能性が出てくる。更に米連邦準備理事会(FRB)がインフレ容認などの新戦略の方針を示しており、低金利が長期化する見通しであることも金の支援要因となる。米大統領選後に新たな措置が決定されドル安に振れれば、金ETF(上場投信)の買い意欲が強まるとみられる。

 ただ、郵便投票の急増から米大統領選の開票で混乱することに対する警戒感が出ている。郵便投票は開票に時間がかかり、接戦となった場合、勝者確定が遅れる可能性がある。郵便投票は民主党支持者の割合が多いとみられ、開票直後に共和党が優勢だった場合、トランプ米大統領が早々に勝利宣言し混乱することも警戒されている。米大統領選の開票が順調に進むかどうかも確認したい。

●金は新型コロナウイルスの感染再拡大と景気見通しも確認

 欧州の新型コロナウイルス感染の第2波が猛威を奮い、世界の感染者数は4000万人を超え、死者も110万人を上回った。欧州各国では飲食店の営業制限など制限措置が強化され、一部地域ではロックダウン(都市封鎖)が再導入された。北半球は冬季でインフルエンザなど感染症が流行しやすい。米国でも新型コロナ感染が再拡大しており、今後発表される経済指標で景気回復の鈍化が示される可能性がある。クラリダFRB副議長は、米経済は新型コロナウイルスの打撃から力強く回復しているが、コロナ危機以前の水準に戻るまでに1年はかかる可能性があり、労働市場の回復にはさらに時間がかかるとの見通しを示した。

 新型コロナウイルスのワクチン開発について、米製薬ジョンソン・エンド・ジョンソンや米イーライ・リリーが、安全性の問題から臨床試験を一時中断すると発表した。一方、米ファイザーはドイツのビオンテックと共同で開発しているワクチンについて、11月下旬に米当局に緊急使用許可(EUA)を申請する公算が大きいと発表した。米国では製薬各社のワクチンが広く行き渡るのは早くても来年4月とされている。世界中に行き渡るのは2024年になるとみられており、世界経済の正常化には更に時間がかかりそうだ。

●金ETFに一部手じまい売り

 金の内部要因では、ETFに投資資金が流入したが、リスク回避の動きをきっかけに一部で手じまい売りが出た。世界最大の金ETFであるSPDRゴールドの現物保有高は10月14日に1277.94トン(9月末1268.89トン)まで増加したのち、20日に1269.93トンとなった。

 一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、ニューヨーク金先物市場でファンド筋の買い越しは10月13日時点で24万0671枚となった。6日時点で7月21日以来の高水準となる24万8587枚まで拡大したが、戻り売り圧力が強まって買い越しを縮小した。リスク選好の動きが戻れば買い戻し主導で上昇するとみられる。

(MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行)

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