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【特集】2021年はコロナショック後の回復の年となるか、石油市場は前途多難 <コモディティ特集>

minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司
 2021年は石油市場の回復の年となるのだろうか。驚きに満たされた2020年が歴史に残るのは間違いないにしても、混乱の元凶であるコロナ禍は終わっていない。

 2020年は米国によるイラン革命防衛隊のスレイマニ司令官殺害に始まり、新型コロナウイルスの流行による需要の蒸発、協調減産をめぐるサウジアラビアとロシアの対立・決別、石油輸出国機構(OPEC)プラスの瓦解と再起、ニューヨーク原油のマイナス価格など、衝撃的な出来事が続いた。

●バイデン政権の新エネルギー政策がリスク

 今年の目に見えるリスクはバイデン政権の船出である。主要国では化石燃料が目の敵にされつつあり、米国では温暖化ガスの排出低減など、環境問題を優先した舵取りが始まる。新型コロナウイルスの流行によって大きな経済的被害を受けた石油産業はバイデン政権によってさらに痛めつけられる可能性がある。新規投資が手控えられ、米国の原油生産量の拡大は頭打ちとなるだろう。先々の供給不足を警戒しなければならない。

 ただ、電気自動車などを中心としてクリーンエネルギーが優先される経済へ移行していくにしても、依然として発電の主役は化石燃料である。米国では石炭と天然ガスによる発電が約6割を占めており、原子力発電を加えると8割を超える。ガソリンやディーゼル燃料に依存する車両が減少し、電気自動車が販売の中心となっていくのだろうが、電力需要を賄うために化石燃料の消費はおそらく増える。世界的に原子力発電が縮小・廃止の傾向にあることからすると、電力市場における化石燃料の依存度はさらに拡大する。

 米国は世界最大の石油消費国であり、産油大国である。ロシアやサウジアラビア並みに原油を生産できるのは世界で米国だけであり、バイデン政権が目指すように化石燃料需要が抑制されていくならば、米経済の柱の一つである石油産業は縮小せざるをえない。エネルギー政策の根本的な転換は4年間では困難だが、その礎を築くことができるのか注目したい。

●需要見通しの些細な変化が急激な値動きに

 原油相場の水準が回復基調にあるなかで、5日のOPECプラスの会合でOPECプラス加盟国全体として2-3月の増産規模を緩やかにし、大規模増産は見送ることで合意した。ロシアは1月に続いて2月も日量50万バレル増産することを支持していた。ノバク露副首相によると、ロシアにとって1バレル=45~55ドルの価格帯が好ましく、OPECプラスが現在のような大規模な減産目標を維持する必要性は乏しいと認識しているようだ。

 ただ、ロシアとは反対に、サウジアラビアは5日の会合で日量100万バレルの自主的減産を発表した。原油価格は回復しているものの、需要見通しの改善が相場を押し上げているだけであり、足元の需要は低迷したままである。新型コロナウイルスのワクチンによって経済活動が正常化し、需要が回復するなら市場は増産分を吸収するだろうが、見切り発車での増産は過剰在庫を押し上げ、いずれ相場を圧迫する可能性が高い。

 コロナ禍が続くなかで、バイデン政権の船出のほか、OPECプラスの増産あるいは内部の意見調整は相場を不安定にするだろう。原油価格だけをみれば相場は安定しつつあるように見えるかもしれないが、上向きの需要見通しが値を支えているだけである。コロナショック前と比較して経済活動は明らかに低調であり、市場参加者の需要見通しの些細な変化が急激な値動きにつながる場面が多いと思われる。

(minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司)

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