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【特集】銀は個人の買いが押し上げ8年ぶり高値も、実需売りで往って来い <コモディティ特集>

MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行
 の現物相場は1月28日、米国の個人投資家の買いをきっかけに急伸し、2013年2月以来の高値29.99ドルをつけた。ただ、その後はニューヨーク銀(NY銀)に実需筋のまとまった売りが出たことやドル高を受けて上げ一服となり、「往って来い」の値動きとなった。

 米国のオンライン掲示板「レディット」で27日、「世界最大のショート・スクイーズ SLV銀は25ドルから1000ドルに」と題された投稿があり、まとまった個人投資家の買いが入った。ビデオゲーム小売りのゲームストップ株などを標的にしたレディット投資家が銀ETF(上場投信)のアイシェアーズ・シルバー・トラスト(SLV)を新たな標的にした。

 投稿では「金融機関が金や銀価格を操作しており、インフレ調整後の銀価格は1000ドルになる」と主張しており、「金融機関の売り玉を狙ってショート・スクイーズを起こせ」と指示した。レディット投資家はSLVのほかに銀貨や銀鉱山株も買い漁り、週明け2月1日には銀貨の供給不足を引き起こした。カナダの銀生産会社ファースト・マジェスティック・シルバー株は13.89ドル(1月27日)から一時24.01ドルに上昇している。

 一時20倍近くまで急騰したゲームストップ株のように銀のショート・スクイーズも成功するかに見えたが、ニューヨーク銀で2日に実需筋のまとまった売りが出ると急落した。銀は株式と違いコモディティであり、価格が上昇すると現物が出てくるため、高値を維持できなかった。また、2月に入りドルが買い戻されたことも銀の上値を抑える要因になった。

 実需筋は下げ止まるとともに買い戻しており、レディット投資家はヘッジファンドの売り玉を狙って買い上げたが、結果的に実需筋に売り場を提供することになった。

●銀は景気回復の行方を確認

 銀は金相場につれて動くことが多いが、工業用需要の占める割合が多く、需給は景気の行方に左右されやすい。新型コロナウイルスの感染拡大による欧州諸国のロックダウン(都市封鎖)や制限措置で景気の先行き懸念が残っているが、ワクチン接種の進展で中長期の景気回復期待が強い。3月にロックダウンや制限措置が解除され、その後に集団免疫を獲得すれば景気回復から銀の工業用需要が回復し、需給は引き締まる。

 一方、各国中銀の量的緩和が継続され、各国政府の景気刺激策で大量の資金が投入されていることが投資需要の続く要因である。銀ETF(SLV)に押し目買いが入れば、景気回復とともに30ドルを突破し、次の節目となる35ドルを目指すとみられる。

 9日の銀ETFの現物保有高は1万9808.07トンと、過去最高となった2日時点の2万1067.85トンから減少した。今回の相場が始まった時点の1万7787.58トンを上回っているが、上放れに失敗したことで手じまい売りが出ている。

 米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、2日時点のニューヨーク銀のファンド筋の買い越しは5万1409枚となり、前週の5万4460枚から縮小した。相場が急伸するなか、ファンド筋は利食い売りに動いた。一方、当業者の売り越しは7万3854枚(同7万3412枚)に拡大した。

●米議会での公聴会も確認

 米下院の金融サービス委員会は、ゲームストップ株などの乱高下を巡り18日に公聴会を開く。議題は「ゲームはストップしたか? 空売り投資家とソーシャルメディア、リテール投資家の衝突では誰が勝者で、誰が敗者か」。ネット証券のロビンフッドがゲームストップ株などの取引を制限したことについて、ヘッジファンドの救済を狙ったとの見方も出ており、公聴会の行方を確認したい。

 また、米上院の銀行住宅都市委員会の次期委員長であるブラウン議員も公聴会開催を約束している。公聴会は銀市場に関わることはないとみられるが、レディット投資家と今後の株式市場に影響する可能性もあり、内容を確認したい。

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