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【特集】金は7ヵ月ぶり安値、米国債利回り上昇で強気見通し後退 <コモディティ特集>

MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行
 の現物相場は、米国債の利回り上昇を受けて軟調となり、昨年7月以来の安値1761.25ドルをつけた。

 米民主党はバイデン米大統領が発表した1兆9000億ドル規模の追加経済対策案の成立を目指しており、週内に本会議で可決される見通しである。また、米政権は次の大型経済パッケージを3月にも公表する。「ニューディール」政策以降で最大となるインフラ支出を盛り込み、米経済を新型コロナウイルス以前の状態に回復させるとしている。その巨額の財政支出に対する懸念から米10年債利回りは昨年2月以来の高水準となる1.39%まで上昇、長期金利の上昇を受けて金ETF(上場投信)からの投資資金の流出が進んでおり、金の圧迫要因となった。

 年明けの時点ではドル安・インフレ見通しから金は史上最高値を更新するとの強気見通しが多かったが、長期金利の上昇による投資資金の流出を受けて強気見通しは後退した。また、 ビットコインが最高値を更新しており、一部の投資家が金ETFから乗り換えている。米電気自動車大手テスラがビットコインを15億ドル購入したことを受けて投資家のビットコインに対する関心が高まっている。

 ただ、今後各国で新型コロナウイルスの感染拡大防止の制限措置が解除され、インフレが進むと、金の下支え要因になるとみられる。インフレ・ヘッジとして金を買い拾う動きが出るかどうかも次の焦点である。

 一方、米10年債利回りが1.6%を超えると、新興国市場に対する脅威になるとみられている。米主要株価指数は景気回復期待を受けて史上最高値を更新したが、長期金利上昇から株安に転じると、金の現金化の動きが続く可能性もある。米国債の利回り上昇を受けて欧州債も上昇しており、ラガルド欧州中央銀行(ECB)総裁が「長期債の動向を注意深く見ている」と述べている。

 パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長は議会証言で「現在の市場の動きについては景気回復への期待を反映している」と、米FRBの政策支援がインフレ高進を招くとは考えにくいとの見方を示し、当面は景気支援の継続が必要とした。市場では今後の動向次第ではイールドカーブ・コントロール(長短金利操作)の導入が検討されるとの見方も出ている。

●英国はロックダウンの段階的な緩和計画を発表

 ジョンソン英首相は22日、ロックダウン(都市封鎖)の段階的な緩和計画を発表した。新型コロナウイルスの感染拡大を受けて1月5日にロックダウンを再導入したのち、ワクチン接種が進んでいることや感染率の低下を受けて慎重に緩和できるようになった。3月8日に学校の対面授業を再開したのち、段階的に緩和し、早くて6月21日までに全ての規制を解除するという。他の欧州諸国も英国に続くとみられ、経済活動が再開されれば景気が回復し、インフレが進むことになる。

 ただ、新型コロナウイルスの変異種に対する懸念が残っている。米食品医薬品局(FDA)は米ファイザー・独ビオンテック製と米モデルナ製のワクチンが変異種に有効としているが、効果が弱ければ改良する必要があるとしている。改良されたワクチンの臨床試験に数ヵ月の時間がかかる可能性があるとしており、変異種とワクチンの行方も確認したい。

●ブラックロックは金ETFから銀ETFに乗り換え

 世界最大の金ETFであるSPDRゴールドの現物保有高は22日に1115.40トン(12月末1170.74トン)となった。昨年9月の1278.82トンをピークとして投資資金の流出が続いている。世界最大の資産運用会社ブラックロックが昨年第4四半期に金ETFの一部を売却し、銀ETFに乗り換えたことが明らかになっており、景気回復に向かうと、他の機関投資家も追随するとみられる。

 一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、ニューヨーク金先物市場でファンド筋の買い越しは2月16日時点で23万4969枚となり、当面のピークである1月5日の27万9318枚から縮小した。長期金利上昇を受けて手じまい売りが進んだ。ただ、強気見通しが後退するなかで新規売りも出ており、インフレの見方が強まると、買い戻しが下支えになるとみられる。

(MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行)

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