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【特集】戻り高値更新の金、景気回復期待と地政学リスクの揺れる天秤 <コモディティ特集>

MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行
 の現物相場は米国の景気回復期待などを背景にETF(上場投信)から投資資金が流出し、下値を試したが、3月以降、1700ドル割れで下げ一服となった。インフレに対する警戒感から米国債の利回りが上昇したことも圧迫要因になったが、米連邦準備理事会(FRB)の低金利継続見通しが繰り返されると、利回り上昇が一服し、金の下支え要因になった。一方、4月に入ると、ロシアがウクライナの国境付近に部隊を集結させたことや、日米首脳の共同声明で「台湾海峡の平和と安定の重要性」を明記したことから、地政学的リスクも意識された。これが材料視され、金ETFに投資資金が戻るようなら支援要因になるとみられる。

 テクニカル面では1700ドル割れでダブルボトムを形成し、ネックラインとなる3月18日の戻り高値1754.82ドルを突破したことで弱気の見方が後退した。1800ドルの節目や200日移動平均線(1856.51ドル)を突破すれば強気に転じる。ただ、新型コロナウイルスのワクチン接種が進むなか、世界的な景気回復見通しに変わりはない。金ETFからの投資資金流出が続くと、圧迫要因になるとみられる。

 一方、インドでは2月に金の輸入関税が12.50%から10.75%に引き下げられた。価格下落で買い意欲が強まったこともあり、3月の金輸入量は前年同月比471%増の160トンと過去最高を記録した。ただ、インドは4月に入り新型コロナウイルスの感染拡大の勢いが過去最悪となった。首都ニューデリーで1週間のロックダウン(都市封鎖)が発表されるなど多くの地域でロックダウンが導入されており、4月の輸入量は100トンを下回るとみられている。インドの買いが一巡すると、1800ドルの節目が抵抗線になるとみられる。

●景気回復期待と地政学的リスク

 国際通貨基金(IMF)は春季の世界経済見通しで、2021年の世界の成長率予想を6.0%と前回1月の5.5%から上方修正した。米国は1兆9000億ドル規模の追加経済対策が成立し、1976年以降で最も高い成長率を見込んでいる。また、今回の見通しでは新型コロナウイルスのワクチン接種で先進国と新興国の格差が生じていることが指摘されており、資金は新興国から先進国に流れるとみられている。

 ロシアはウクライナとの国境地帯で軍備を増強している。ロシア政府は北大西洋条約機構(NATO)の配備に対応したものとしたが、2014年のクリミア侵攻以来、最大規模であることから侵略に対する懸念が出ている。バイデン米大統領はロシアのプーチン大統領に米ロ首脳会談を提案しており、会談の行方も確認したい。

 一方、日米首脳の共同声明で「台湾海峡の平和と安定の重要性」を明記し、中国は内政干渉と反発した。バイデン米大統領は、東シナ海や南シナ海などの問題も指摘しており、欧米諸国と中国との対立で地政学的リスクが高まるかどうかも焦点である。

●金ETFからの投資資金流出が続く

 世界最大の金ETFであるSPDRゴールドの現物保有高は19日に1021.70トン(3月末1037.50トン)となった。昨年9月の1278.82トンをピークとして投資資金の流出が続いている。

 一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、ニューヨーク金先物市場でファンド筋の買い越しは4月13日時点で18万0874枚(前週18万9509枚)となった。2019年6月以来の低水準となった3月30日の16万7528枚買い越しから拡大した。新規買い・買い戻しが続くかどうかを確認したい。

(MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行)

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