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【特集】原油は上昇を続けるか?イラン大統領選など注目イベントが目白押し <コモディティ特集>

MINKABU PRESS CXアナリスト 谷口 英司
 6月は注目イベントが立て込んでいる。18日のイラン大統領選を控え、イラン核合意の再建協議の行方を見定めなければならない。イラン大統領選の立候補者には反米強硬派が名を連ねていることから、穏健派のロウハニ大統領が現職の間に協議をまとめないと合意再建が危うくなるとみられている。これまでの報道から、米国の対イラン原油制裁解除やイランの増産はすでに価格に織り込まれている可能性が高く、交渉の不調は原油相場を押し上げるだろう。

●金融政策見通しにも注目

 物価上昇率の加速を背景に超緩和的な金融政策を行っている各国中銀の動きにも注目しなければならない。来週の欧州中央銀行(ECB)理事会や再来週の米連邦公開市場委員会(FOMC)に向けて神経質な雰囲気が強まっていくだろう。

 米国と比較してユーロ圏の物価の伸びはまだ限定的だが、ベース効果もあって5月以降もインフレ率が加速する可能性が高く、金融当局者の発言次第では金融市場全体が動揺する。欧州連合(EU)で新型コロナウイルスのワクチン接種率は1回目が38.4%、摂取完了が18.3%、米国の場合は50.5%と40.7%となっている。1回摂取型の米ジョンソン・アンド・ジョンソンのワクチンも投入されていることから、経済活動は夏場にかけてほぼ正常化し米欧の物価を押し上げるだろう。

 ベース効果など一時的な要因が後退した後の物価見通しが、金融政策の見通しも分ける。今のところ米国や欧州の当局者は高水準のインフレ率は長続きしないと見ており、ECB理事会やFOMCで原油を含めたリスク資産市場が揺さぶられることはなさそうだ。新型コロナウイルスのワクチンは持続期間が不明であることから、冬場の再流行を警戒しなければならず、安易に金融政策を変更することはできないと思われる。製薬企業並びに医療関係者が手探りである以上、中銀にとっても予断を許さない状況が続く。ただ、各国中銀の声明文から金融緩和の継続を確信するまで緊張感は持続するだろう。

●ワクチン接種の進展で相場の主役は供給サイドへ

 今月24日には石油輸出国機構(OPEC)総会が久しぶりに対面で行われるようだ。これまでは新型コロナウイルスの流行でオンライン会合だけになっていたが、産油国でもワクチン接種が進展しており、OPEC総会の運営も正常化に向かっている。OPECプラスは4月の会合で決まった日量210万バレルの段階的な増産を続ける見通しであり、対面での総会が再開されるとしても新たな決定はなさそうだ。ただ、米国とイランが核合意の修復を成し遂げ、米国がイラン制裁を解除するならばイランは増産するだろう。イランの供給拡大で需給バランスが変わることから、注目度が低いわけではない。

 新型コロナウイルスのワクチン接種の拡大で米国や欧州などの経済活動が正常化に向かっているほか、時期的に北半球のガソリン需要は拡大するが、需要回復はすでに想定内であり、今後は供給見通しの変化や、金融政策など外部環境の動きが値動きにより影響するのではないか。米国の追加景気対策の行方が需要回復期待をさらに高める可能性があるとしても、どちらかといえば供給サイドの要因が相場の主役として存在感を発揮するだろう。

(MINKABU PRESS CXアナリスト 谷口 英司)

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