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【特集】金は雇用見極めで当面もみ合いか? FRBタカ派転換が圧迫要因に <コモディティ特集>

MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行
 の現物相場は、米連邦公開市場委員会(FOMC)でタカ派転換が示されたことをきっかけに急落した。また、米金融当局者の発言を受けてドル高に振れたことも下げ要因となり、4月15日以来の安値1751.74ドルをつけた。ただ、6月の米雇用統計の発表を控えて買い戻し主導で下げ一服となると、雇用不足に対する懸念を受けて1800ドル台を回復した。米FOMCでのタカ派転換を受けて先物市場でファンド筋の買い越しが大幅に縮小し、これまでの強気姿勢が一転したが、米連邦準備理事会(FRB)の政策転換にはさらに著しい進展が必要とみられている。当面は経済指標を確認しながら、新たなレンジを形成し、方向性を模索することになりそうだ。

●米FRBのタカ派転換もインフレと雇用不足で意見が分かれる

 5月の米消費者物価指数(CPI)は事前予想の前年同月比4.7%上昇を上回り5.0%上昇と、約13年ぶりの大幅な伸びとなった。インフレは一時的とみられているが、FOMCで利上げ前倒し予想が示されタカ派転換の見方が強まっている。金利・経済見通しで18人の当局者の過半数が2023年末までに少なくとも2回の最大0.25%の利上げを予想。また、パウエル米FRB議長は米FOMC後の記者会見で、量的緩和の縮小(テーパリング)について「討議することを開始した」と表明した。市場では、米FRBがワイオミング州ジャクソンホールで開かれる8月の年次経済シンポジウムでテーパリングに関する計画を発表し、年末か年明けに開始するとみられている。また、利上げ時期は2023年1月と予想されている。

 米金融当局者の発言では、インフレ高進が予想以上に長期化する可能性に対し、雇用不足によるリスクを重視すべきとの見方で意見が分かれている。ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁は、労働市場の回復にはまだ時間がかかるとし、経済は完全雇用に程遠いとしている。

 6月の米雇用統計では非農業部門雇用者数が前月比85万人増と、5月の58万9000人増から伸びが加速した。失業率は5.9%と5月の5.8%から悪化した。雇用者数は今後も増加するとみられているが、雇用不足に対する懸念が残っている。成人女性の復職について見方が分かれており、学校再開の動向などで見極めには時間がかかるとみられている。

●NY金先物のファンド買い越しは2019年6月以来の低水準

 世界最大の金ETF(上場投信)であるSPDRゴールドの現物保有高は6日に1042.23トンとなった。1800ドル割れで安値拾いの買いが入る場面も見られたが、6月18日の1053.06トンを直近のピークとして減少した。米FRBのタカ派転換を背景に投資資金が流出した。

 米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、ニューヨーク金先物市場でファンド筋の買い越しは6月29日時点で16万2226枚(前週16万6214枚)に縮小し、2019年6月以来の低水準となった。直近では5月25日の21万4642枚をピークとして縮小している。1900ドル台で利食い売りが出ると、FOMCをきっかけに手手仕舞い売り・新規売りが進んだ。売られ過ぎ感から買い戻される場面も見られたが、当面は売り転換となるかどうかを確認したい。

 金の独自材料では1800ドル割れをきっかけに上海金のディスカウントがプレミアムに転じた。1900ドル台で実需筋が高値買いを見送りディスカウントに転じていたが、米FOMC後の急落をきっかけに買い意欲が高まった。インドでも経済活動が再開しており、宝飾需要の回復につながると下支え要因になるとみられる。

(MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行)

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