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【特集】原油相場の最大リスクは先進国のワクチン依存、中国はデルタ流行を食い止められるか? <コモディティ特集>

minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司
 新型コロナウイルスが変異を繰り返すなか、デルタ株が世界中で流行している。米ファイザー<PFE>や米モデルナ<MRNA>が開発したワクチンの効果は半年程度で弱まるようで、ワクチン先進国では接種完了者も感染している。イスラエルでは高齢者に対する3回目の投与が始まったが、ブースター接種で全てが丸く収まるのだろうか。

  原油市場は先月から調整含みである。昨年4月以降の上昇トレンドが失速しており、上値が重い。デルタ株は感染力が強く、石油需要の回復見通しは曇った。直近の米エネルギー情報局(EIA)の週報で需要は拡大を続けているものの、米政府がロックダウンなど新たな行動制限を打ち出すならば、世界最大のエネルギー消費国である米国で需要回復が腰折れする可能性がある。

●中国でもデルタ株が拡大すれば需給見通しは更に弱気へ

 中国におけるデルタ株の感染拡大も懸念要因だ。中国は世界最大の原油輸入国であり、第2位の石油消費国である。中国の需要が失速しても、世界的な需給見通しは弱気な方向へ傾くだろう。中国製薬大手シノバック・バイオテックが開発したワクチンの効果が疑問視されていることもあってか、中国政府は大規模PCR検査や地域的な封鎖、パスポートの発給制限など感染対策を矢継ぎ早に繰り出している。米国の新規感染者数は7日移動平均で約10万人まで拡大している一方、中国では100人程度だ。中国の感染対策は迅速で、かなり積極的である。

 中国の対応と比較すると、米国はデルタ株の流行に対して何もしていないに等しく、ワクチン頼みであるといえる。今週13日、米疾病対策センター(CDC)はコロナワクチンのブースター接種について協議するようだが、経済活動の再開を優先するあまりワクチンに依存しすぎだと思われる。治験の終わっていない緊急承認のワクチンを繰り返し接種するなら、副反応のリスクは否応なく高まるのではないか。

●原油市場にとって最大のリスクはワクチンへの過度な依存

 デルタ株の流行拡大、あるいは新型コロナウイルスのさらなる変異に対して、ワクチンでどこまで持ちこたえられるのだろうか。ワクチン接種で先行したイスラエルや英国、米国などでは時間の経過と共にワクチンの効果が薄まり、接種済みの人々のブレイクスルー感染が拡大していくだろう。高齢者だけでなく、優先接種の対象である医療従事者にも3回目の投与を実施し、事態の改善を期待するほかないのだろうか。医療従事者も追加の実験対象とするならば、医療システム全体にとって余計なリスクを招きかねない。

 原油市場にとって最大のリスクは、主要国がワクチンに過度に依存していることである。米ファイザーや米モデルナ、あるいは他社のワクチンが救世主ではなかったとなれば、原油高は崩れるだろう。感染力の強いデルタ株が中国で感染を広げる可能性があることもリスクである。ワクチンに頼らず厳格な検疫措置を実施する必要があるようであり、余裕のなさは市場参加者を不安にしている。コロナ相場はまだまだ終わりそうにない。

(minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司)

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