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【特集】デルタ株の感染拡大で原油市場は調整含み、ブースター接種はコロナ克服につながるか? <コモディティ特集>

minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司

 ウエスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物やブレント原油など、指標原油は調整局面に入った。WTIは一時5月以来の安値圏まで軟化している。新型コロナウイルスのデルタ株の流行が世界的に拡大しており、需要回復見通しが後退していることが一因と考えられる。米ファイザーなどが開発したワクチンによって一時的に見通しが改善していたものの、経時的に免疫力が弱まることから、3回目の追加接種が始まった。

●イスラエルで3回目の接種が開始

 イスラエルでは今月から3回目の接種が始まっており、接種対象の年齢層が順次引き下げられている。リスクの高い60歳以上で少なくとも1回ワクチンを接種した人の割合は90%を超えており、3回目の接種を完了した割合は60%超に達している。特に70~79歳の3回目の接種率は77.8%と順調だ。

 イスラエル保健省(IMH)によると、10万人あたりで、60歳以上のワクチン完全接種者が重症化した割合は5月に一時ゼロとなった。接種から約半年が経過した5~6月が新型コロナウイルスを最も封じ込めていた時期といえる。新規感染者数もかなり少なく、同国がコロナを乗り越えたと思われていた期間である。

 ただ、その後は60歳以上の2回目接種者の重症化率は増加していく。7月末では10万人当たり5~6人だったが、8月24日時点では21.2人と増加傾向にある。10万人あたり21.2人であり、ワクチンのおかげでリスクがかなり限定されているとはいえ、3回目の接種が始まり3週間が経過しても重症化率は上向いたままである。

 ちなみに60歳以上のワクチン未接種者で重症者数の割合は増加傾向で、10万人あたり245.6人である。60歳以上の高齢者に関して重症化リスクは約10倍と、ワクチン2回目接種者と未接種者の差異は明らかである。ワクチンが十分な効果を発揮していることに疑いはない。

 一方、60歳未満でもデルタ株の流行後は未接種者、2回目接種者で重症化率が穏やかに上向いているが、24日時点で10万人あたりの重症者数は未接種者で4.0人、2回目接種者は1.4人と十分な差があるように見えない。新型コロナウイルスは発症後に容態が悪化するまでの期間が短く、初期段階での投薬が有効であることがわかっているが、医療現場の経験の積み重ねが60歳未満の重症化抑制につながっているのだろうか。

●先行するイスラエルの状況が原油市場の指針に

 イスラエルでは感染拡大が続いているものの、重症化するのは主にワクチンを接種していない高齢者である。死者の大半も60歳超である。60歳未満についての感染拡大を強く問題視する必要は乏しいのではないか。

 ただ、高齢者から実験的に3回目の接種を開始したにも関わらず、重症化率が穏やかに悪化している状況は見過ごせない。米ファイザーと独ビオンテックが開発したワクチンによって重症化リスクは確実に抑制されているにしても、不穏な推移と言わざるを得ない。一部で危惧されているように抗体依存性感染増強(ADE)の発生を警戒すべきなのだろうか。イスラエルの感染状況は今後も原油市場の指針となりそうだ。

(minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司)

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