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【特集】米国の利上げ開始に向けた助走は原油価格を圧迫へ <コモディティ特集>

minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司
 今週の米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果については原油市場でも注目されている。米国の金融政策やドルの行方が原油相場のトレンドを決定づけることはないにしても、コロナショックを経た後の転換点となるFOMCとなる可能性が高く、注目すべきイベントである。

 新型コロナウイルスのパンデミックは過剰流動性相場、あるいは金融相場の始まりだった。主要国の中銀が一斉に金融緩和を開始したことで溢れたマネーが金融市場へ流入し、リスク資産を活気づけた。体験したことのない疫病に四苦八苦する実体経済とは異なり、株式を中心としたリスク資産市場は堅調そのものだった。原油などのコモディティ市場も流動性相場の恩恵を受けたといえる。コモディティ市場の値動きの基本である需要と供給から離れて、行き場を模索するマネーが相場の流れに拍車をかけた。

 ただ、現在もコロナ変異株がかなり流行しているとはいえ、ワクチンによって死者数の増加がやや抑制されていることから超緩和的な金融政策を維持する根拠は薄れた。一部の中銀に続き、米連邦準備制度理事会(FRB)も金融緩和の軌道を修正しようとしている。早ければ今週のFOMCで資産購入ペースの減速が発表され、バランスシートの拡大が止まる時期が明らかとなりそうだ。米国でコロナの流行を食い止めるための都市封鎖が繰り返され、景気回復が腰折れするリスクは低いとみられている。

 FRBのバランスシートの拡大が止まれば、焦点は自ずと利上げ開始に移る。コロナ後の経済活動が正常化し、景気が過熱気味に推移していることから金利の正常化をためらう理由は乏しいが、資産購入の停止からすぐに利上げとなるのか、米金融当局者のさじ加減を確かめなければならない。新型コロナウイルスの変異の行方を気にかける必要があることから、パウエルFRB議長が利上げを急ぐとは思えないものの、コロナばかりを警戒し続けていては中央銀行として何もできない。雇用の回復が遅れている一方、インフレ率は高水準で推移しており、なすべきことは明らかである。

 FRBが政策金利の引き上げなど金融政策を正常化しようとしていることは、原油を含めたコモディティ市場の重しである。今冬に新型コロナの流行がまた強まり、FRBがタカ派的な舵取りを微調整することはありうるが、そうでなければ来年に向けて段階的に正常化が行われることになるだろう。とりあえずはFOMCメンバーの金利見通しであるドットプロットから利上げ開始時期を探りたい。

(minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司)

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