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【特集】ロシア制裁で石油需給はひっ迫、十分な供給増が期待できない世界が向かう果ては?<コモディティ特集>

minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司
 ウクライナに侵攻した対ロシア制裁を背景に、ロシアの石油生産量や輸出量が大幅に減少している。輸出量は石油製品と原油を合わせて、少なくとも日量300万バレル超と見られているが、統計的な数値として今のところはっきりしておらず、市場参加者の視界は不透明である。ロシアは米国やサウジアラビアと並ぶ世界最大級の産油国である。

 ただ、世界の石油需要の約3%が突如供給されなくなったことから、需給はひっ迫している。米国を中心とした西側各国はウクライナへ派兵せず第3次世界大戦は回避され、パニック相場における買いは一巡したが、現在の需給がどの程度の高値を正当化するのか見定める必要がある。軍事行動を停止しないロシアに対して、欧州連合(EU)が石油の輸入停止を決定するならば見通しはまた変わる。
●ロシア減産を補う当てのない西側諸国

 世界最大級の産油国である米国は今のところ増産していない。米エネルギー情報局(EIA)の週報で、原油生産量は日量1160万バレルと、2月以降は横ばいである。石油輸出国機構(OPEC)プラスは日量40万バレルの増産目標の拡大ペースを維持する見通しだ。増産余力のあるサウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)が現行の合意から離れて増産することはない。サウジのムハンマド・ビン・サルマン皇太子はOPECプラスが増産合意を維持する重要性を協調し、追加増産を否定している。イラン核合意再建が成し遂げられるなら、日量100万バレル超の増産が期待できるものの、ロシアの減産を補う当てがないのが現状である。

 ウクライナ危機を背景にエネルギー価格が一時暴騰したことから、消費者・企業マインドは悪化した。ロシアとウクライナの停戦が合意に至ることが期待されている反面、不透明感が残っており、石油需要は弱含みそうだ。停戦協議が妥結に至っても、景気見通しの不透明感が後退するわけでもない。西側と非西側の分断の先にはどのような世界が待っているのだろうか。今月の月報でOPECは需要見通しの修正を見送ったが、国際エネルギー機関(IEA)は2022年の需要を日量95万バレル引き下げ、通年で同9970万バレルとした。

●米国の経済指標の変化に注意

 スペインではトラック運転手や運送業界によるストライキが始まった。燃料価格の高騰に耐えきれず、政府に対して減税や規制緩和を要求している。欧州だけでなく、米国やアジア圏でもディーゼル燃料を含む中間留分の在庫が低水準で推移しており、燃料価格を押し上げる背景となりうる。脱炭素の取り組みによって石油産業への投資が減少していることなど、ロシア制裁がなくとも燃料高の要因はかなり多い。

 エネルギー高は企業や消費者心理を圧迫し、景気見通しを悪化させている。米ミシガン大学消費者信頼感指数の低下が鮮明であるが、政策金利の引き上げや物価高に米経済は耐えられるのだろうか。米国債のイールドカーブはフラット化しており、警戒感は上向きだ。供給不足の需給バランスの是正は需要鈍化によって成し遂げられるしかなさそうだが、そうであるならば暗い未来が待っている。消費者や企業は景気悪化で石油需要がしぼむまで、高値にただ耐えるのみである。世界最大の石油消費国である米国の経済指標の変化には目を向けておきたい。

(minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司)


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