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【特集】金相場は堅調も、米FOMCやロシアの対独戦勝記念日が次の焦点に<コモディティ特集>

MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行

 の現物相場は、3月の原油急落を受けて調整局面を迎えたが、ロシアとウクライナの戦闘長期化などを受けて1900ドル割れで下げ一服となった。西側諸国の対ロ制裁が強化されインフレ懸念が強いことも、下支え要因である。ただ、米連邦準備理事会(FRB)の大幅利上げが見込まれていることが上値を抑える要因になった。

一方、ロシア軍がウクライナの首都キーウを制圧できずに撤退すると、多数の民間人虐殺が明らかとなった。欧米諸国はロシアの戦争犯罪を非難し、欧州連合(EU)はエネルギー部門で初めての石炭禁輸を決定した。原油禁輸も検討されており、今後の協議の行方を確認したい。

また、ロシアの民間人虐殺を受けてウクライナとの和平交渉が行き詰まるなか、ロシアのラブロフ外相は和平交渉を行うために軍事作戦を一時停止することはないとした。ロシア軍の再配置でウクライナ東部が次の焦点になるが、ロシアは避難所を爆撃し、鉄道駅に短距離弾道ミサイルを撃ち込み民間人に多数の死傷者が出ている。ロシア軍が12日、南部マリウポリで化学兵器を使用した可能性があるとも報道されている。

ロシアのプーチン大統領はウクライナ東部を制圧し、対独戦勝記念日となる5月9日の勝利宣言を目指しているとみられるが、西側諸国がウクライナに兵器と資金を提供しており、ウクライナ軍の反撃は激しいものになると予想される。これまでロシアは自国の存在が脅かされた場合にのみ核兵器を使用するとしており、今後の戦況の行方とプーチン大統領の対応を確認したい。

金はインフレヘッジや資金の逃避先(セーフヘイブン)として買われると、再び上値を試す可能性が出てくる。

●次回FOMCの決定と株式市場の反応も確認

 3月の米消費者物価指数(CPI)は前月比1.2%上昇、前年同月比8.5%上昇した。前月(前年同月比7.9%上昇)から加速し、1981年12月以来の伸びとなった。原油価格が3月に上げ一服となり、インフレはピークを迎えるとの見方もあるが、国連食糧農業機関(FAO)発表の3月の食料価格指数は前年同月比34%上昇し過去最高となり、先行き不透明感が燻っている。

ブラード・セントルイス地区連銀総裁は、米政策金利は下半期に3.5%に達する必要があると述べ、米連邦公開市場委員会(FOMC)で50ベーシスポイント(bp)の利上げが6回必要とした。ハト派のエバンズ・シカゴ地区連銀総裁も、年末までに政策金利を2.25~2.50%の中立水準に引き上げることに反対しない姿勢を示しており、利上げ見通しに変わりはない。また、3月15~16日の米FOMC議事要旨で、保有国債を月600億ドル、住宅ローン担保証券(MBS)を月350億ドル削減することで「おおむね合意した」としている。ブレイナードFRB理事はバランスシート縮小着手に言及しており、5月3~4日の次回FOMCでは大幅利上げとバランスシート縮小が決定されるとみられる。大幅利上げが嫌気されて株価が急落すると、金ETF(上場投信)に逃避買いが入る可能性が出てくる。

●SPDRゴールドにインフレヘッジの買いが入る

 世界最大の金ETF(上場投信)であるSPDRゴールドの現物保有高は、4月11日に1090.49トンとなり、2月末から61.47トン増加した。インフレ懸念の高まりを受けて投資資金が流入した。ただ、FRBの大幅利上げ見通しなどを受けて一部利食い売りが出る場面も見られ、今後の動向を確認したい。

一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、ニューヨーク金先物市場でファンド筋の買い越しは4月5日時点で24万5541枚(前週25万7596枚)に縮小し、2月22日以来の低水準となった。調整局面を迎えたのち、レンジ相場となるなか、手仕舞い売り・新規売りが出た。ただインフレ懸念の高まりが下支え要因であり、買い直されるかどうかを確認したい。

(MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行)

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