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【特集】プラチナは堅調、米利上げペース減速でドル安も景気減速懸念 <コモディティ特集>

MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行
 プラチナ(白金)の現物相場は7月、ドル高や景気減速懸念を受けて2020年9月以来の安値831ドルをつけたのち、米連邦公開市場委員会(FOMC)をきっかけに上昇に転じた。米FOMCではフェデラルファンド金利の誘導目標を75ベーシスポイント引き上げ2.25~2.50%としたが、パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長が今後の利上げペース減速の見方を示したことからドル安に振れ、プラチナに買い戻しが入った。ニューヨーク市場ではファンド筋が売り越しており、ドル安に振れると買い戻し主導で上昇しやすい。

 8月に入ると900ドル台を回復し、戻り高値を突破したことから一段高となった。ただ、国際通貨基金(IMF)が世界経済見通しで経済成長予想を再び下方修正しており、景気減速懸念がプラチナの上値を抑える要因である。米国内総生産(GDP)が2四半期連続でマイナスとなり、景気後退に対する懸念も出たが、7月の米雇用統計で労働市場の堅調が示され、景気後退には陥っていないとみられている。しかし、各国の中央銀行の利上げが続く見通しであることに加え、欧州向けのロシアの天然ガス供給の減少で景気の先行き懸念が残っている。

 また、8月に入り上海プラチナの出来高が急減する場面も見られ、実需筋が高値での買いを見送ったことも上値を抑える要因である。目先は今夜発表される7月の米消費者物価指数(CPI)が焦点である。インフレは鈍化すると予想されているが、高インフレが続き米FRBの大幅利上げ見通しにつながるとドル高に振れ、プラチナの戻り売り圧力が強まるとみられる。

●IMFは代替シナリオで2.6%までの減速見通しも示す

 IMFは世界経済見通しで、2022年の世界の経済成長率予想を4月時点の3.6%から3.2%に下方修正した。高インフレやロシアのウクライナ侵攻で世界経済の下振れリスクがあり、景気後退に追い込まれる可能性もあると指摘した。また、ロシアが欧州向けの天然ガス供給を遮断し、原油輸出がさらに減少するという代替シナリオでは2022年に2.6%まで減速するとの見通しを示した。景気の先行き懸念が残るなかではプラチナが継続して上昇するのは難しいとみられる。

 ただ、IMFの発表後、ペロシ米下院議長が台湾を訪問したことで米中間の緊張が高まっており、地政学的リスクが意識されるかどうかも焦点である。中国の軍事演習が続き、米国債に逃避買いが入れば、利回り低下からドル安に振れ、金主導でプラチナも上昇する可能性がある。

●NYプラチナで大口投機家の売り越しが続く

 プラチナETF残高は8日の米国で35.03トン(6月末36.51トン)、英国で14.37トン(同15.81トン)、5日の南アフリカで10.49トン(同10.67トン)となった。景気後退(リセッション)懸念や各国中銀の利上げ見通しなどを受けて投資資金が流出した。

 一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、8月2日時点のニューヨーク・プラチナの大口投機家の売り越しは2541枚(前週4468枚)に縮小した。7月12日の5911枚をピークとして売り越し幅は縮小したが、6月28日以降、売り越しが続いており、売り圧力が強いとみられる。

(MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行)

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