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【特集】ビッグデータ活用で「新潮流」 <株経トップ特集>


―クレカの決済情報を販促に利用―

 「ビッグデータ」という言葉を耳にするようになって久しいが、これを活用したさまざまな分野で新たな動きが続出している。その一つがクレジットカードなどキャッシュレス決済に伴い得られるビッグデータの活用だ。訪日外国人の増加によるインバウンド需要の喚起に向けて、さらなるキャッシュレス化の普及が各方面で進められているが、ここで得られたデータを有効活用することで、新たなビジネスの創出にもつながると期待されている。

●経産省がスタディグループを設置

 経済産業省は9月30日、「クレジットカード産業とビッグデータに関するスタディグループ」を設置すると発表した。訪日外国人のインバウンド需要の喚起などに向けてキャッシュレス化のさらなる普及が進められているなか、キャッシュレス決済に伴い得られるビッグデータの利活用に向けて実務的な検討・協議をするのが目的という。

 参加企業としては、クレジットカード事業者からはクレセゾン <8253> 、ジェーシービー、ビザ・ワールドワイド・ジャパン、三菱UFJニコスが、また、ビッグデータ関係事業者ではアイリッジ <3917> [東証M]、ヴァリューズ、カスタマー・コミュニケーションズ、大日印 <7912> などが名を連ねている。

●インバウンド消費への応用期待

 6月に閣議決定された「日本再興戦略 改訂2015」で、キャッシュレス決済に伴い得られるビッグデータの利活用を促すための環境整備について検討することが盛り込まれたことを受けて、同スタディグループは設置された。

 今後、現在は各社ごとに保有しているカード利用情報を集約した膨大なビッグデータの分析結果の加盟店への提供などを検討する方針で、政府もこのデータを活用し、インバウンド消費拡大などの施策を検討する。

●アイリッジ、大日印などに注目

 同スタディグループでは、年度内をメドに報告書のとりまとめを予定しているが、これを受けて今後、クレジットカード決済から得られるビッグデータ活用を促進するための環境整備が進むとみられ、関連銘柄には注目したい。

 まず注目されるのが、スタディグループに名を連ねるアイリッジだろう。オンライン上のウェブサイトやアプリを通じて消費者に情報を提供しオフライン(実店舗)への集客につなげる「O2O」の支援事業を手掛け、スマートフォン向け情報配信システム「popinfo(ポップインフォ)」の提供が中心。顧客企業のアプリにpopinfoを組み込むことで、ユーザーが店舗エリアに近づくと、利用者のスマホにクーポン情報を自動的に配信するなどの機能があり、三井不 <8801> や東急 <9005> など大手企業を中心に300アプリ超に導入されている。

 また、同じくスタディグループに参加している大日印は、ユニシス <8056> と共同で、カード決済情報を流通・小売りなどが保有するPOSデータと紐づけ、商品単位でキャッシュバック可能なクーポンの配信を実現した。これを利用することで、小売り主体のキャンペーンだけではなく、例えば流通の棚を確保したいメーカーがタイアップキャンペーンを行うなどの展開も期待されている。

●野村総研、コロプラにも活躍余地

 一方、スタディグループとは別に、既にクレジットカードの決済情報を販促に活用する「CLO(Card Linked Offer)」を手掛ける企業も増えている。NTTデータ <9613> では昨年10月、クレジットカードの決済情報と位置情報を組み合わせ、消費者にクーポンやキャンペーン情報を配信するサービスを開始すると発表した。

 野村総研 <4307> も昨年8月、クレジットカード大手のセディナ(東京都港区)と協力し、キャッシュバッククーポンの実証実験を行い、準備を進めている。前出のスタディグループの取りまとめの内容にかかわらず、今後はこうした企業のビジネスチャンスが拡大しよう。

 このほか、スマホゲーム関連としてのイメージが強いが、位置情報活用にも強みを持つコロプラ <3668> や、位置情報との連動で用いられるBeaconを手掛けているACCESS <4813> [東証M]、アプリックス <3727> [東証M]などもクレジットカード決済に伴うビッグデータ活用関連銘柄として名前が挙がりそうだ。

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