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【特集】感染拡大シーズンに突入、好業績「新型コロナ対策先駆株」に再評価機運 <株探トップ特集>

好業績にもかかわらず株価が低迷する感染対策先駆株。感染シーズン突入で見直し買いの可能性も高まりそうだ。

―世界感染者数5000万人突破、安心・安全の日本製ニーズは急増へ―

  新型コロナウイルス感染者数が、ついに世界全体で5000万人を突破した。欧州では再びロックダウン(都市封鎖)に陥る国も出現。大統領選で揺れる米国も新規感染者数が連日10万人を上回るなど、収束の糸口どころか新型コロナの猛威は拡大する一方だ。日本でも冬を前に感染者数はじわり増加傾向にある。中国における新型コロナの感染拡大が騒がれ始めた年初を振り返ると、当初はまさに対岸の火事といったムードだった。しかし、1月20日に横浜を出港したクルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号乗客の感染が2月1日に確認されたことで、風向きが一気に変わる。株式市場でも急速に感染症対策に関連する銘柄にスポットライトが当たることになった。当時、対策関連株として人気化した銘柄は現在どうなっているのだろうか。インフルエンザとのダブル流行が警戒される今年の冬、改めて先駆した銘柄の「いま」を追った。

●低迷する株価、押し目買いニーズ喚起も

 決算発表が佳境を迎えている。日本経済が疲弊するなかにおいても、新型コロナ感染拡大を背景にした“新しい日常”が社会生活を変貌させ、これを追い風とした関連銘柄の業績は総じて好調だ。ソーシャルディスタンスが日常生活で求められる状況で、診療、イベント、教育をはじめとする一連のオンライン関連銘柄は、まさにコロナ禍の出世株と表現しても過言ではない。時代の要請は、好業績を導き株価を後押しすることで、現在もなお投資家の視線は熱い。

 一方、感染拡大が社会的不安を増幅させた年明けから春に、株式市場で新型コロナ対策の一角として脚光を浴びたウイルス除去やマスク、防護服などといった防疫に絡む銘柄は好業績にも関わらず株価は冴えないものも少なくはない。業績好調は既に織り込み済みとの見方もあるうえ、一時極端な品不足だった関連製品が市中に出回ったことから、思惑買いも影をひそめる状況にある。ただ、ウィズコロナが日常となった現在、活躍の舞台がロングランとなることは容易に想像がつくだけに、感染拡大シーズンを目前にして押し目買いニーズを喚起する可能性もある。

●まず大幸薬品、川本産業など「新型肺炎思惑」で浮上

 最初に登場した新型コロナに絡む記事としては、1月10日の「大幸薬品は続伸、武漢で発生の肺炎からコロナウイルス検出で思惑」だった。これを皮切りに、新型コロナ絡みの記事が急速に増えていく。16日には「川本産業などマスク関連が大幅高、日本で新型肺炎を初確認」、20日「川本産業が急反発、新型コロナウイルス肺炎の患者拡大で思惑」、21日「日経レバは断トツの売買代金で下値試す、新型肺炎への警戒感で先物主導の下げ反映」などの記事が続いた。当時の記事を振り返ると、「肺炎」「新型肺炎」「コロナウイルス」「新型コロナウイルス肺炎」と名称も統一されていない。また、中国発感染症の日本への影響に関しては、未知のウイルスに対する警戒もさほど高くはなかったといえる。

 新型コロナ対策関連の一角として先駆した大幸薬品 <4574> は、空間や物に付着したウイルスや菌を除去する「クレベリン」に注目が集まり、昨年12月には1000円近辺だった株価が、今年8月には3000円手前まで買われ3倍化した。その後調整局面入りするが、現在は10月27日につけた直近安値1801円を底にじわり上値指向。現在は、2000円近辺で推移している。マスクや手指消毒剤、医療機関向け個人用防護具などの感染管理製品の販売が伸びている川本産業 <3604> [東証2]だが、年初には500円手前だった株価が急速人気化し2月3日には4000円まで買われるという大変貌ぶりに投資家の視線が集まった。現在は、1300円付近でもみ合うものの調整一巡感も漂う。両銘柄とも決算発表を間近に控えており、目が離せない状況が続きそうだ。

●中京医薬「需要継続」、ニイタカは新製品も貢献

 新型コロナ感染の不安が徐々に広がるなか、頭角を一気に現したのが二酸化塩素を利用した除菌製品「エアーマスク」シリーズを手掛ける中京医薬品 <4558> [JQ]や、業務用洗剤、洗浄剤が主力のニイタカ <4465> だった。中京医薬品は今月5日、21年3月期の単独業績予想について、売上高を52億円から58億円(前期比12.3%増)へ、営業利益を1億円から2億3000万円(同3.2倍)へ上方修正した。第2四半期までの期間においてマスクなどの除菌消臭関連商品の販売が好調で、今期から製造をスタートした除菌用アルコール製品の販売も堅調。第3四半期以降においてもこれらの商品の需要が継続する見通しだとしている。ニイタカは9月後半に第1四半期(6-8月)連結決算を発表し、営業利益が6億8600万円(同2.5倍)と大幅増益となった。なお、21年5月期通期業績予想は、同利益について前期比19.6%減の13億円の従来見通しを据え置いている。アルコール製剤の販売が引き続き堅調だったほか、導入が増えているアクリル製パーティションなどのウイルス除去ニーズに対応した洗浄剤「ケミガード」などの新製品も貢献。また、医薬部外品で高付加価値の手指用消毒液の出荷が多かったことも利益向上につながっている。

●「イータック」のエーザイ乱高下、マナックは急落も

 また、エーザイ <4523> とともに除菌対策関連の一角として一躍スターダムにのし上がったのがマナック<4364.T>だった。マナックは臭素化合物大手で難燃剤やファインケミカル事業を主力とするが、エーザイが販売する「イータック抗菌化スプレーα」が脚光を浴びるなか、同製品の主成分「Etak」を供給し、Etakは同社と広島大学大学院の二川浩樹教授による共同開発品であることから思惑買いが株価を押し上げた格好だ。マナックが4日大引け後に発表した第2四半期累計(4~9月)の連結営業利益は、前年同期比50.4%増の3億2100万円となった。感染予防効果を発揮する固定化抗菌剤Etakの需要が大幅に増加している。ただ、翌日の株価は材料出尽くし感もあり11%を超える急落となった。一方のエーザイは5日取引時間中に発表した第2四半期累計(4-9月)で連結営業利益が前年同期比6.4%増となったものの、米バイオジェンと共同開発するアルツハイマー型認知症治療薬「アデュカヌマブ」の実用化を巡って株価は乱高下しており、今後の行方に関心が高まっている。

●高値圏舞うユニチャーム、見直し買いに期待かかる興研、重松製

 マスクについては、品薄状態は解消されており市中に大量の製品が出回っているが、“マスク相場”を牽引してきたユニ・チャーム <8113> とN95マスクなどを扱う興研 <7963> [JQ]、重松製作所 <7980> [JQ]の業績は好調継続。ユニチャームは6日取引終了後、第3四半期累計(1-9月)の決算を発表。営業利益が前年同期比30.4%増の891億5000万円となった。マスクなどの感染症対策商品の需要拡大や、日本製商品へのニーズの高さを背景に業績を押し上げている。株価は、春先から一貫して上昇波動を継続しており、9日には5270円まで買われ上場来高値を更新した。興研が4日に発表した第3四半期累計(1-9月)の営業利益は前年同期比2.6倍、6日に発表した重松製の第2四半期累計(4-9月)の同利益は黒字転換で通期計画を超過している。両銘柄ともに今年に入り急速人気化したものの1月31日に高値をつけた後は調整局面入り。折に触れ動意はするものの株価は冴えない状況が続いているが、感染シーズン突入で見直し買いに期待がかかる。

 世界での感染拡大に加え、国内では冬を前にして1日当たりの新規感染者が1000人を超える日も多くなってきており、増加傾向が顕著になりつつある。新型コロナとインフルエンザの同時流行が懸念される今年の冬、なによりも好業績であることから、感染症対策銘柄に再評価機運が高まる可能性もありそうだ。

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