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【特集】コロナ禍の成長ロード、在宅消費拡大で「物流関連株」が本領発揮へ <株探トップ特集>

新型コロナ感染拡大に伴う外出自粛の動きが追い風となってEC需要の拡大に拍車がかかっている。在宅消費で橋渡し役を担う物流関連株が株式市場で改めて注目され始めた。

―2度目の緊急事態宣言で巣ごもり需要を喚起、株式市場でも物色機運再び拡大へ―

 首都圏4都県に続き関西など7府県にも緊急事態宣言が再び発令された。新型コロナウイルスのワクチン接種が近づき経済正常化に対する期待が高まったところに変異種の感染が広がっており、一筋縄ではいかなくなった。2021年も新型コロナと共存する年となりそうだ。しかし、コロナ禍が逆に追い風となって電子商取引(EC)の需要は一段と拡大することが見込まれる。経済の生命線となる「物流」は在宅消費への橋渡し役として、新たな観点でマーケットの視線を集めている。こうしたなか、恩恵を受ける物流関連株にも見直し機運が膨らんでいる。

●外出を控えた人々が頼ったのは「宅配便」

 物流業界の大部分は、大型トラックで材料や部品を工場に輸送したり、食料をスーパーに配送したりするB2Bだが、小型車で顧客に直接荷物を届けるB2Cもある。いわゆる宅配便だ。昨年はコロナ禍の影響で国内全体では貨物輸送の荷動きが鈍化したものの、外出を控えた人々に必要な品を届ける「宅配便」 は好調に推移した。宅配便で4割以上のシェアを握る業界最大手のヤマトホールディングス <9064> が7日に発表した20年4-12月累計の小口貨物取り扱い実績は前年同期比15.0%増の約15億9922万個と2ケタ増となった。

 物流に関する調査・分析などを行う日通総合研究所(東京都港区)は昨年12月、「2020・2021年度の経済と貨物輸送の見通し」を発表。これによると、20年はコロナ禍の影響で営業用自動車の輸送量が7.0%減となったものの、21年には消費関連などを中心に持ち直して2.5%増と2年ぶりに増加となる見込みだ。また、宅配便も引き続き好調を維持する見通し。運送業界はこれまで長きにわたり、人手不足による人件費アップに加えて過剰供給状態に悩まされてきたが、コロナ禍をきっかけに成長分野となった数少ない業界だ。

 eコマース市場の拡大で前述のヤマトHDのほか、アマゾンジャパンを最大顧客とする物流企業のファイズホールディングス <9325> 、アマゾンジャパンと地域限定の配送業者「アマゾンデリバリープロバイダ」として提携する丸和運輸機関 <9090> 、物流施設を武器にアマゾンジャパンとの取り引きを増やしているSBSホールディングス <2384> といった銘柄も、在宅消費の恩恵を受けている。

●コールドチェーンに強みを持つB2B関連に注目

 物流の手法の一つとして「コールドチェーン」と呼ばれる一貫した温度・湿度管理による品質保持をしながら製造や保管、輸送までつなげる低温輸送網は、足もと株式市場で注目度が急上昇している。冷凍食品中食、医薬品、半導体を含む電子部品、化学品分野などで採用され潜在成長力も高い。こうした傾向はコロナ禍での巣ごもり需要もあって一段と加速するとみられている。

 いま期待されている新型コロナのワクチンは、その原料を運ぶには空輸が必要なため、陸・海・空運など国際総合物流に強みを持つ日本通運 <9062> に活躍余地が大きい。同社は昨年8月、医薬品の適正流通基準(GDP)に基づく品質管理に対応したグローバルサプライネットワークを構築していると発表。原材料や製品の輸出入拠点である成田国際空港、関西国際空港のほか、東日本など国内4ヵ所に医薬品に特化した拠点を建設して順次稼働する。日通独自で開発した医薬品専用車両も導入する。10月の九州拠点、12月の西日本拠点に続き1月には富山拠点と東日本拠点も竣工し、2月にもサービス開始となる予定だ。

●メディカル物流で安田倉などに熱視線

 メディカル(医薬品・ヘルスケア・ワクチンなど)物流は、緻密な温度管理や品質管理を求められるうえ専門的な作業が伴うため、相対的に付加価値が高いとされるが、新型コロナがもたらすネガティブな影響を受けにくい分野でもある。同分野に強みを持つ安田倉庫 <9324> は今21年3月期の営業利益が25億円(前期比28.0%減)と減益見通しだが、22年3月期を最終年度とする3ヵ年計画で、物流事業で物流施設の拡充などを通じて事業基盤の強化を図ることにより今期予想比6割増の40億円と最高益更新を目指すとしている。株価指標面ではPBR0.4倍台と割安水準にある。このほか、30年前から医薬品物流業務を展開し同分野をリードしてきた三菱倉庫 <9301> や、病院の物流改善に実績を持つ鴻池運輸 <9025> などにも目を配っておきたい。

●食品分野に強みを持つ銘柄群に注目

 コールドチェーンはもともと食品業界を中心に普及してきた経緯がある。低温物流の売上高でトップに位置する企業は冷凍食品に強みを持つニチレイ <2871> だ。同社は昨年11月に、21年3月期連結営業利益予想を315億円から320億円(前期比3.1%増)へ上方修正したが、これは全社的なコスト抑制効果に加え、低温物流事業で家庭向け需要が増加していることでTC(通過型物流センター)の取り扱いが拡大していることなどが背景にある。

 C&Fロジホールディングス <9099> は、低温食品の需要を取り込み年々取り扱い物量が増加している。21年3月期連結営業利益は56億円(前期比15.3%増)を見込んでいるが、第2四半期累計(20年4-9月)の同利益は既に32億9000万円(前年同期比25.1%増)と順調に拡大している。株価は昨年12月下旬から上げ足を速め今月12日には2204円に買われ上場来高値を更新した。このほか、7日に20年11月期決算が予想を上回って着地したキユーソー流通システム <9369> なども注目を集めている。

●アルプス物流は「電子部品」引き合い活発化

 電子部品 向け物流を主力とするアルプス物流 <9055> [東証2]は昨年12月中旬、21年3月期の連結営業利益予想を従来の32億円から37億5000万円(前期比8.9%減)に上方修正した。電子部品業界の市況回復や新規案件の受注獲得などで、電子部品物流事業の貨物取り扱い量が想定以上に増加しているほか、外出自粛や在宅勤務の広がりを背景とする生協向け宅配ビジネスが好調に推移しているようだ。株価はこうした業績の回復を織り込み、今週に入り連日で昨年来高値を更新している。

●日新は大底圏離脱に期待

 海陸空一貫輸送を強みとする国際物流大手の日新 <9066> が昨年11月に発表した第2四半期累計(20年4-9月)連結営業損益は2億5100万円の損失(前年同期18億9700万円の黒字)と赤字に転落した。ただ、四半期ベースでは7-9月期は7700万円の黒字と4-6月期の3億2800万円の赤字から改善している。7-9月期は食品関連や電子部品の航空向けが好調となったことに加えて、アジアや米州で自動車関連貨物が徐々に回復していることが寄与したようだ。株価は11月中旬を境に調整しているが、足もとでは5日・25日移動平均線のミニゴールデンクロスを示現。配当利回りが4.5%前後と高水準であり、株価は大底圏離脱が期待できるタイミングにある。

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