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【特集】コロナ駆逐へ接種開始! 「ワクチン普及」で活躍必至の銘柄総ざらい <株探トップ特集>

米ファイザー製の新型コロナワクチンの接種が国内でも始まった。今後は米モデルナ製や英アストラゼネカ製のワクチンも控えており、株式市場ではワクチン周辺株を物色する動きが再燃している。

―ファイザーワクチン1億4400万回分確保、「物流・保冷・輸送」で注目の企業群―

 米ファイザーが開発した新型コロナウイルスのワクチンについて、厚生労働省は14日、正式に申請を承認したと発表した。きょうから医療従事者を対象に、先行して接種が始まっており、順次、高齢者などに接種を進めていく方針だ。ファイザーのワクチンに関しては、変異株の新型コロナウイルスにも作用する抗体がつくられた、といった内容の研究結果も発表されている。また、米モデルナ製の新型コロナウイルスワクチンについては武田薬品工業 <4502> が国内で臨床試験(治験)を実施しているほか、英アストラゼネカもワクチンの製造販売承認を厚生労働省に申請しており、早期の国内承認を目指している。その他、米ノババックスのワクチンでは武田が原液から国内製造する「国産ワクチン」と位置づけ、今秋以降の供給開始を目指している。

●セ氏マイナス70度以下の超低温輸送

 先行して接種が開始されたファイザーのワクチンでは、政府が年内に1億4400万回分(7200万人分)の供給を受けることで契約を結んでいる。世界でワクチン争奪戦が繰り広げられており、予定通り供給されるかはまだ不透明な部分はあるが、ワクチン接種による発症予防・重症化防止効果が期待されることで、経済活動が回復していくとの見方が高まりやすい。また、同時にワクチン接種体制・流通体制の構築といった、市町村・都道府県において行うべき準備も加速していくことになる。

 なお、ファイザーのワクチンについては、セ氏マイナス70度以下での保管・輸送が求められており、超低温輸送の技術が必要となる。ワクチンを保管・供給するための超低温冷凍庫(ディープフリーザー)については、1月下旬にPHCホールディングス(東京都港区)、EBAC(東京都目黒区)、日本フリーザー(東京都文京区)、カノウ冷機(相模原市南区)の4社が受注したと既に報じられている。

 PHCホールディングスはもともと「パナソニック ヘルスケアホールディングス」として設立された企業であり、株主にはパナソニック <6752> 、三井物産 <8031> が入っているほか、日本フリーザーの生産協力会社には大和冷機工業 <6459> が入っているため、関連銘柄の一角として位置づけられる。また、パナソニックではワクチンの輸送や一時的な保管ができる保冷ボックスを開発しており、今春にも販売が見込まれるほか、超低温での保存が必要となるファイザーのワクチンにも対応する。大和冷機工業では環境に優しいノンフロン冷媒を採用したフリーズ超低温槽や薬用冷蔵ショーケースなどを手掛けている。

●ツインバードや神栄など急動意

 そのほか、ワクチン保冷庫の関連としてはツインバード工業 <6897> [東証2]が挙げられ、株式市場でも昨年来株価を大きく上昇させ投資家の注目を浴びた経緯がある。同社では保冷庫の増産設備を昨年12月に本格稼働したと伝えられている。モデルナのワクチン用の保冷庫5000台を武田に納入する契約を結んだとも発表しているほか、同社の保冷庫は保管だけでなく接種会場までの輸送にも使用できるようだ。

 神栄 <3004> も1月に株価を既に急動意させた。同社は湿度センサーなどを手掛けているグループ会社の神栄テクノロジーが展開している温度ロガー「TempView(テンプビュー)」が庫内温度を計測管理するツールとして、モデルナの国内の物流分野で採用されている。また、フクシマガリレイ <6420> はファイザーのワクチンも保管できる保冷庫を手掛けており、庫内を均一に冷やす制御技術に強みを持っている。

●物流で商機を捉える陸運大手

 更に、物流面においては、ファイザーのワクチンの国内輸送をヤマトホールディングス <9064> 、セイノーホールディングス <9076> 傘下の西濃運輸、独DHLの3社が担うと伝えられている。ヤマトHDでは傘下のヤマトロジスティクスがシスメックス <6869> と共同で、低温~超低温帯の遺伝子検査用試薬の輸送におけるロジスティクスの実運用を今月から開始している。

 また、モデルナのワクチンについては、近鉄エクスプレス <9375> がフォワーダー(混載貨物事業者)として内定したとも報じられている。日立物流 <9086> は次世代物流センターであるスマートウエアハウス「東日本第二メディカル物流センター」を埼玉県加須市に開設。GDP(医薬品の適正流通基準)に準拠した物流拠点として温度管理、厳重なセキュリティー管理、免震構造を採用しているほか、次世代省人化センターの実現に向け、AGV(自動搬送車)、無人フォークリフトといった、さまざまな新技術も実装する。

 日本通運 <9062> は、医薬品物流網の構築に向けて整備した医薬品物流拠点に、温度帯設定に広く対応する独自開発の医薬品専用車両を導入している。このほか、伊藤忠商事 <8001> の子会社である伊藤忠ロジスティクスは、米国で医薬・バイオ分野のロジスティクスを中心とした情報を発信する月刊誌「Pharma Tech Outlook」(ファーマテックアウトルック)から医薬品・医療機器への取り組みが評価されて「2020年アジア太平洋地域のトップ10サプライチェーン マネジメントコンサルティング/サービス企業」に選出されている。

●倉庫業界にも風雲急の気配漂う

 倉庫関連業界なども風雲急の気配で直近の動きはチェックしておきたい。三菱倉庫 <9301> は医薬品の流通過程における品質管理基準に対応した医薬品保冷配送サービス「DP-Cool」の配送エリアを沖縄に拡大することを決定しており、医薬品保冷配送サービスを北海道から沖縄まで全国に提供することが可能となる。安田倉庫 <9324> は、物流事業者として初めて医療機器修理業全区分の許可を取得し、医療機器の修理業務に参入しているほか、1月にメディカル物流に特化した「東雲営業所辰巳倉庫(東京メディカルロジスティクスセンターⅡ)」を開設している。

 なお、接種場所に関しては、前例のない大規模集団接種が行われることが予想されている。直近では、イオン <8267> がワクチン接種会場として自社の商業施設を自治体向けに提供する方針を固めたと伝えられている点も認識しておきたい。

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