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【特集】リフレ相場に乗れ、大手商社株は“万年割安”脱却の絶好期 <株探トップ特集>

その割安さに注目し「相場の神様」バフェット氏も積極買いを入れたのが、日本の大手商社株だ。世界経済が正常化すれば、大きな恩恵を享受できるだけに、再評価余地は大きい。

―バフェット氏大量買いに追随、商品相場上昇で再評価機運強まる―

 “万年割安株”と称された 商社株が、大きな転機を迎えている。コロナ禍を背景にした米連邦準備制度理事会(FRB)による積極的な金融緩和策を背景に、長期金利が上昇傾向を強めるなか、投資マネーは石油や非鉄、穀物など商品相場に向かった。また、新型コロナウイルスに対するワクチンの接種拡大による経済正常化への期待も高まっている。こうしたなか、世界景気回復の恩恵を強く享受する、大手商社株への見直し機運が浮上している。

●伊藤忠が米バークシャ―・ハザウェイの保有上位銘柄に登場

 毎年2月になると注目を集めるのが、「投資の神様」と呼ばれるウォーレン・バフェット氏による「株主への手紙」だ。今年は27日に公開されたが、その手紙のなかで同氏が経営する米バークシャー・ハザウェイが保有する上位15銘柄に伊藤忠商事 <8001> が入ったことが判明した。バークシャーは昨年8月に伊藤忠のほか三菱商事 <8058> や三井物産 <8031> 、丸紅 <8002> 、住友商事 <8053> の大手商社に投資し大株主となったことを表明したことは記憶に新しい。今回、伊藤忠がバフェット銘柄の上位に顔を出したことで積極買いは裏付けられた格好だ。

 大手商社株というと、4%近い高配当利回り、1倍割れの低PBRという代表的な割安銘柄の地位に長年放置されてきた。実際、株価は上値が重い状態が続いたため昨年夏の時点では「なぜ、バフェット氏はわざわざ日本の大手商社株を買うのか」と懐疑的にみる向きも少なくなかった。しかし、足もとで商社株には見直し機運が強まり伊藤忠の株価は上場来高値圏を駆け上がっているほか、三井物の株価も2月に2008年以来、13年ぶりの高値水準をつけている。

●石油、銅、穀物の上昇でCRB指数は反発基調強める

 大手商社株の見直し要因には、銅など非鉄、トウモロコシなど穀物といった商品市況が上昇基調に転じてきたことがある。中国をはじめとした世界景気の回復期待を背景に、2月下旬に銅価格は9年半ぶりの水準に上昇した。石油も約1年ぶりの高値圏に値を上げた。トウモロコシの価格も需要回復と南米での供給減少で2月下旬に8年半ぶりの水準に上昇した。石油や非鉄、穀物など国際商品が強含むなか、商品価格の総合的な値動きを示し商社株との連動性も強いロイター・コアコモディティーCRB指数が昨年4月安値から足もとまで80%近く上昇している。

●米国の「リフレーション政策」が商社株買いを促す

 足もとの米国の政策は、FRBが大量のマネーを供給するとともに、米政府が大型経済対策を成立させて、景気回復と物価上昇を引き起こす「リフレーション」を生みつつあるともみられている。このなか、米長期金利が上昇し商品相場も値上がりする環境にあるが、今後の物価上昇に対するヘッジ対象を物色する「リフレトレード」が始まりつつあるなか、その絶好の投資対象として注目されているのが商社株だ。ディープバリュー株を大量に買い込むバフェット氏は、いち早く日本の大手商社株に目をつけた。しかし、市場での本格的な見直しはこれからであり、絶好の追随買いのチャンスを迎えていると言えるだろう。

●三菱商は累進配当で魅力、アルコニクスなど専門商社も注目

 商社株を牽引する伊藤忠は、非資源事業を主力とし食料事業を中心に収益を伸ばし、時価総額は大手商社でトップとなった。21年3月期の連結純利益は前期比20%減の4000億円が見込まれているが、第3四半期(4-12月)時点での進捗率は91%に達しており、最高益を記録した前期に迫る水準への増額が期待されている。また、三菱商や三井物は資源分野に強みを持っており、原料炭などは鉄鋼需要の回復が追い風となる。三菱商は、株主還元は配当を基本とし、減配せずに利益成長に合わせて増配する「累進配当」方針を伊藤忠とともに採用しており、配当利回りは4.5%近い水準にある。住友商の配当利回りも4.5%近辺、三井物や丸紅は3%台半ばの水準にあり、3月の配当取りに向けて絶好のタイミングにある。

 また、総合商社株では双日 <2768> や豊田通商 <8015> にも見直し余地が大きいほか、兼松 <8020> なども注目。専門商社では、ゴム・化学品に強い三洋貿易 <3176> 、三菱系で化学品などを主体とし中国に強い明和産業 <8103> 、機械の第一実業 <8059> 、それに非鉄商社でレアメタルにも強いアルコニックス <3036> などにも注目したい。

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