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【特集】コロナ契機に高まる非接触ニーズ、小売り「無人店舗」拡大の波に乗れ <株探トップ特集>

人手不足解消から注目された「無人店舗」だが、新型コロナ感染症の影響が長期化するなか、「非対面」による安定的なサービスを提供する新たなスタイルとして普及が加速している。

―試験運用から本格展開へとフェーズ進む、大手の参入も相次ぎ市場は活性化へ―

 国内でも2月から新型コロナウイルスワクチンの先行接種がスタートし、全国各地で医療従事者を対象としたワクチン接種が進められている。政府は、4月12日から高齢者への接種を限定的に開始する予定で、その後順次、接種対象を広げる方針だ。

 もっとも、一般の人々にまでワクチンが行き渡るのはまだ時間が必要で、更に仮にワクチンを接種した後も、感染拡大防止のためには徹底した対策が求められている。

 感染拡大の防止には「人との接触」を回避することが重要となり、これら「非接触」は今や消費行動における重要なキーワードとなっているが、小売りの現場で究極の非接触といえるのが無人店舗 だ。最近ではセブン&アイ・ホールディングス <3382> が自社商品を売る自動販売機の展開を進めるほか、NTTドコモ(東京都千代田区)なども参入しており、市場は活性化しつつある。

●米国や中国が先行

 最近増えている無人店舗は、店内のさまざまな場所に配置した大量のカメラやセンサーで利用客の行動を分析し、キャッシュレス決済 と組み合わせて従来のレジ店員を不要とする店舗のこと。もともと先行していたのは米国や中国で、米国ではアマゾン・ドット・コムが2018年に始めた「Amazon Go(アマゾン・ゴー)」が有名だが、食品や飲料を中心にした小型店の「Zippin(ジッピン)」などスタートアップも多く参入している。

 また、中国では一時期急速に店舗を増やした無人コンビニこそやや下火になったものの、eコマース最大手であるアリババ集団が運営するキャッシュレスの食品スーパー「盒馬鮮生(フーマフレッシュ)」は順調に店舗を増やしている。

●高輪ゲートウェイ駅で一気に有名に

 キャッシュレス決済の普及の遅れなどから、米国や中国の後塵を拝してきた日本でも、人手不足の解消やコロナ下における非接触ニーズの高まりを受けて、コンビニエンスストアなど小売各社も試験的な運用を相次ぎ始めている。既に本格運用を始めた店舗もあり、なかでも20年3月に開業したJR山手線の49年ぶりの新駅である高輪ゲートウェイ駅の無人AI決済店「TOUCH TO GO」は全国的にも有名だ。

 運営するTOUCH TO GOは、JR東日本 <9020> グループのJR東日本スタートアップとサインポスト <3996> の合弁会社で、高輪ゲートウェイ駅に続き、20年10月にはJR目白駅に「KINOKUNIYA Sutto」を出店。また、11月にはファミリーマート(東京都港区)と業務提携し、1号店の開設を進めている。同社の無人決済店舗システムや、次世代無人オーダー決済端末にはサインポストの「スーパーワンダーレジ」の技術が活用されており、今後無人店舗が普及するなかで注目が高まろう。

●無人化に活路見出すコンビニ

 前述のファミリーマートをはじめ、無人店舗に特に関心が高いのがコンビニ業界だ。小売業界の勝ち組とされていたコンビニだが、19年に初めて店舗数が減少するなど市場は成熟期を迎えている。国内店舗数は6万店に迫り店舗間競争が激化しているうえ、ドラッグストアなど異業種との競合も発生しており、店舗経営は厳しさを増している。

 更に、リモートワークやeコマースの利用拡大など「新しい生活様式」や、高齢化社会の進展で店舗から足が遠のく顧客が増えている。コロナをきっかけにした「非接触」ニーズの高まりで無人店舗が広がれば、人手不足の解消につながり、経営効率の改善が見込めるだけに、業界が寄せる期待は大きい。

●大手ITベンダーの取り組み

 このように、今後日本でも普及が期待できる無人店舗だが、JR東日本やサインポスト以外にも関連銘柄は多い。なかでも無人店舗に関連するシステムやサービスを手掛ける企業に注目したい。

 NEC <6701> は、東京都港区にある本社内に、社員が利用できる無人店舗を運営している。同店は顔認証 技術を用いて入店し、買いたい商品を選びそのまま退店するシステム。また同社は、グループでマンション居住者用の無人店舗なども手掛けており、無人店舗運営のソリューション展開に力を入れている。

 富士通 <6702> は20年12月、前述の「ジッピン」の総代理店として、レジレスソリューションを日本市場で独占販売する協業を開始した。両社は20年2月からローソン <2651> が取り組む無人店舗の実証実験に参画しているが、今月中にも日本市場向けにジッピンの提供を始める方針だ。

 NTTデータ <9613> は、事前に決済手段を登録しQRコードで認証入店することで、手に取った商品をそのまま持ち帰ることのできる無人店舗サービス「Catch&Go」を小売業界向けに提供している。今年1月には、顔パスで入店から決済までを顔認証で可能とする「顔認証入店」を導入し、同サービスの展開を強化している。

●ヴィンクス、東芝テックなどにも注目

 ヴィンクス <3784> は、18年から社内に無人店舗「ヴィンクス・ストア」を稼働させ新技術や新製品の実証実験をスタート。その成果がトライアルカンパニー(福岡市東区)の展開する、レジが不要なウォークスルー型の決済システムを導入した「スマートストア」などに活用されている。同社ではまた、20年11月に「非接触型セルフPOSシステム」を開発するなど非接触型の商品の開発にも力を入れている。

 東芝テック <6588> は、食品スーパーなど向けに、来店客が自分のスマートフォンをかざして商品のバーコードを読み取り、セルフレジ で現金やスマホ決済で支払いを済ませる「ピピットスマホ」や、タブレット付き買い物カート「ピピットカート」などを展開。自社のセルフレジと組み合わせることで、無人店舗を可能にしている。

 このほか、セルフレジシステムや飲食店向けにキャッシュレスシステムを手掛けるアルファクス・フード・システム <3814> [JQG]や、佐賀大学内にMonotaRO <3064> と共同で無人店舗「モノタロウ AI ストア powered by OPTiM」を開設しているオプティム <3694> などにも注目したい。

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