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【特集】「大阪万博」まであと4年、アフターコロナの象徴として再浮上へ <株探トップ特集>

大阪・関西万博まで残すは4年。万博関連には底値買いのタイミングが近づいている。(写真は万博会場予定地の夢洲)

―25年4月から夢洲で開催、関連株に底値買いのチャンスが広がる―

 2025年の大阪・関西万博(以下、大阪万博)開催まで、あと4年に迫った。新型コロナウイルスの感染拡大に世界が揺れ、1年延期となった今年の東京五輪の行方に注目が集まる一方、大阪万博への関心はいまだ低い。しかし、大阪万博はアフターコロナの象徴になり得る存在だ。コロナ禍において、いまや往時の活況は見る影もないインバウンド関連株も、新型コロナワクチン接種が進むなか、4年後に向けて巻き返しを図ることが期待される。中長期の視点で狙う「大阪万博関連株」の現状を探った。

●荒涼たる大地が実り豊かに変貌へ

 大阪万博は25年の4月13日~10月13日(184日間)の日程で夢洲(ゆめしま)を会場に開催される。夢洲は、万博に加え統合型リゾート(IR)の カジノ誘致でも関連株への注目が高い。現在、カジノ誘致については不透明感も漂うが、それでも万博開催に向けて“夢の舞台”であることに変わりはない。膨らむ建設費やコロナ禍での開催準備だけに課題が多いのも事実だが、会場建設費1850億円、会期184日間、想定来場者数は約2820万人を見込むだけに、その経済的な波及効果は大きい。

 新型コロナの影響で1年延期となり開催を目指す東京五輪だが、既にビジネスの芽は摘み取られた格好だ。株式市場でも東京五輪を商機として捉え、インバウンドを中心とするあまたの関連銘柄にスポットライトが当たったものの、いまや当時の勢いはない。しかし、日本でもようやくとはいえ、きょうからは高齢者を対象にした新型コロナワクチン接種が始まるなど、国内外において接種が広がっており、4年後の万博を見据えれば荒涼たる大地が実り豊かに変貌していることは、容易に想像がつく。当然のことながら、新型コロナとの闘いは数年続くとみられるが、4年後には落ち着きを取り戻していることが想像され、大阪万博が日本経済復活の起爆剤になる可能性は非常に高い。

●「ポジティブに考えてよい」

 準大手証券のストラテジストは「開始まで4年という歳月は正直まだ先の話という印象で、その時の状況がイメージしにくい部分がある」と断ったうえで、「少なくともコロナ禍の現状よりは人の動きは良くなっているだろうという確信はある。ワクチンも世界中に行き渡っているはずで、外客について無観客のシナリオが高まっている今年の東京五輪とはムードは異なる。アフターコロナの環境が見込まれることはポジティブに考えてよい。現時点では参加表明する国や国際機関の確保に苦戦しているもようだが、新型コロナが依然として蔓延している状況下では当たり前の話で、いずれ参加表明は増えていくと思われ、その点は心配ないとみている」と話す。

●「万博関連」低迷続くも光明

 コロナ禍において、大阪万博関連の中核銘柄も総じて業績は厳しい。舞台装置や遊戯機械を手掛け、関連株の一角として投資家の注目を集めた三精テクノロジーズ <6357> [東証2]も例外ではない。同社は地元大阪の企業であることに加え、1970年の大阪万博においては、エレベーターやエスカレーター、オートロード(動く歩道)をはじめ、舞台機構や各種遊戯機械を提供してきた。また、モントリオール万博や、つくば博、愛・地球博でも豊富な実績を持っている。21年3月期通期は、営業利益で前の期比81.2%減を見込んでおり、主要顧客である国内外の遊園地やテーマパーク、劇場などエンターテインメント業界の苦境という厳しい事業環境を反映した格好だ。株価も苦汁を飲む状況にある。大阪万博の誘致思惑を背景に18年には2100円台まで買われたが、現在は3分の1となる700円台で低迷している。

 大阪京都間が主力の私鉄で、ホテルをはじめとするレジャー・サービス業なども展開する京阪ホールディングス <9045> 、“西の名門”と称されるロイヤルホテル <9713> [東証2]も、大阪万博関連として常に名前が挙がる常連株だが、インバウンド消費の消滅に加え、国内でも移動が制限されるだけに、それぞれ今期は赤字を見込むなど厳しい状況が続いている。

 しかし、今後ワクチン接種が本格化することが予想され、加えて来年にかけては国産ワクチンの登場も期待されており、イベントやエンターテインメント、そして観光などに絡む多くの銘柄にもようやく光明が差しそうだ。更に、秋には東京五輪が通過することで、次第に大阪万博へと焦点が移ることも関西を中心とする関連銘柄には追い風となることが予想される。

●夢洲“土地持ち銘柄”には夢のステージ

 一方、大阪万博の会場となる夢洲に絡む“土地持ち銘柄”の業績は、もちろん新型コロナの影響は受けるものの、観光関連と比較すればそれほど大きく落ち込んではいない。夢洲に用地を取得している銘柄では、山九 <9065> が1月に通期の連結業績見通しを営業利益で300億円から320億円(前の期比20.7%減)に上方修正。また、上組 <9364> は同7.6%減を予想している。山九の株価は、2月1日につけた年初来安値3775円を底に反騰態勢をとり、3月26日には5250円まで買われ年初来高値を更新。現在は、上昇一服で4800円を挟みもみ合っている。上組の株価は調整一巡から上値指向となっており、3月15日につけた年初来高値2239円回復をにらむ状況だ。新型コロナワクチン接種が進む過程で、経済活動の正常化に伴う物流の活発化が期待されるだけに今後の展開に期待も高まる。また、大阪万博に関心が移るなか、夢洲に絡む櫻島埠頭 <9353> [東証2]やヨコレイ <2874> にも目を配っておきたい。

●関西地盤企業に商機

 大阪万博への関心の高まりは、インバウンド関連株復活の狼煙(のろし)ともなりそうだ。もちろん、新型コロナの脅威がおさまらないなか、急激にインバウンド需要が戻ってくるわけではない。それでもどん底からの復活、そして実需へと続くリベンジへのまっすぐな道は見えてくる。さまざまな行事が開催を断念する状況で、苦境にあえぐイベント関連にも復活ロードが広がる。地元関西の三精テクノロはもちろん、博展 <2173> [JQG]、乃村工藝社 <9716> 、丹青社 <9743> などにも再び脚光が当たりそうだ。また、膨大な会場建設費を背景に建設需要を喚起することで、大林組 <1802> など関西地盤のゼネコンを中心に、建設株にも思惑買いを誘う可能性が出てくる。

 半年間という長期にわたる開催期間に加え、混沌とする世界情勢を背景に国際的テロも懸念されており、警備保障関連監視カメラ関連にも活躍の場面が広がる。セコムグループで関西を地盤とする東洋テック <9686> [東証2]をはじめ、ALSOK <2331> 、セコム <9735> などにも注目したい。

 前出のストラテジストは「電通グループ <4324> や博報堂DYホールディングス <2433> といった大手広告会社やJR東海 <9022> をはじめとした電鉄会社、リゾートトラスト <4681> 、星野リゾート・リート投資法人 <3287> [東証R]などホテル関連などに追い風となることが予想される」と話すが、大阪万博の開催は現在コロナ禍で苦境を強いられているさまざまな業種に恩恵を与えるだけに、今後の動向から目が離せない。

 東京でダメなら大阪があるさ――。東京五輪が新型コロナという世界的パンデミックに揺れビジネスの芽が摘まれるなか、25年の大阪万博に期待が募る。山高ければ谷深し、谷深ければ山高し。日本経済復活の狼煙は、いま大阪から上ろうとしている。

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