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【特集】新春3大テーマを追う(3)EV 「トヨタ本格攻勢で巨大市場に地殻変動も」 <株探トップ特集>

トヨタがEVシフトへ大きく舵を切ったことで、22年の自動車市場は大きな地殻変動に見舞われる可能性が高い。自動車部品メーカーなどの株価へのインパクトが予想される。

―日系自部品メーカーにインパクト大、リチウムイオン関連銘柄などに追い風―

 2021年12月にトヨタ自動車 <7203> が、電気自動車(EV)シフトを発表したことで世界の自動車市場に激震が走った。同社は、30年までのEVの世界販売台数の従来目標を200万台から350万台へ引き上げた。国内外でEVシフトの動きが加速している。日産自動車 <7201> が30年度までに電動車の世界新車販売に占める割合を5割以上とする目標を掲げ、今後5年間で2兆円の投資を行うほか、ホンダ <7267> も40年の全新車電動化に向けて今後6年間で5兆円を投じる方針だ。米バイデン政権の強力な後押しを得た米市場においても、テスラ<TSLA>のほか、新興EVメーカーのリビアン・オートモーティブ<RIVN>やEV向け充電ステーションネットワークを運営するチャージポイント・ホールディングス<CHPT>が上場するなど関連企業の躍進が目立っている。トヨタがEVシフトへ大きく舵を切ったことで、22年は自動車部品を含めEV関連市場は大きく成長するとともに、地殻変動が起きる可能性が高い。

●トヨタは30年までに8兆円の投資を実施

 トヨタは電動化に向けて22~30年に8兆円の投資を行う。うちEVへの投資額は車載電池への2兆円を含めて4兆円、更に4兆円をEV以外の電動車であるハイブリッド車(HV)燃料電池車(FCV)プラグインハイブリッド車(PHV)の強化に使うというものだ。トヨタのEVシフトの動きを反映して、同関連株が幅広く買われ師走相場をにぎわせた。

 20~21年は、EV市場をいち早く開拓したテスラの株価が急騰し市場の話題が集中した。自動車のEV化によって自動車メーカーの付加価値はハードからソフトへ移っていくという流れのなか、テスラは投資家の高い評価を得た。欧州連合(EU)が昨年7月、35年にHVを含むガソリン・ディーゼル車の販売を事実上禁止する方針を打ち出しておりEVシフトに拍車をかけた。世界最大の自動車市場の中国で、構造の単純化やコストコントロールを徹底しEV1台を破格の50万円前後で買える「宏光MINI EV」が話題になるなど低価格のEVも登場している。これらに対抗し、HV・FCV・PHVを強化しながら、EVの本格増産を進める全方位戦略でトヨタは受けて立った。22年は、市場が新たなスタートを切る1年になりそうだ。

●自動運転でも実力を発揮するデンソーは上場来高値圏で推移

 大手自動車メーカーではトヨタのほか、EVに積極的に取り組む日産自、それにマツダ <7261> などの動向が注目される。また、日系自動車部品メーカーへの影響は大きい。世界2位のデンソー <6902> の株価は上場来高値圏で推移している。同社は、トヨタ系の自動車部品メーカーでトヨタ以外の販売先やEV向けへのシフトを加速し成長に対して意欲的だ。電装系、駆動系に幅広い技術力を持ち、自動運転分野での研究開発でも先駆している。市場では、増益トレンドは来期以降も維持されるほか、EVシフトの加速が同社には強い追い風となり株価の見直し余地は大きいとみられている。

●車載用モーターの日電産や三井ハイテクなどに注目

 EV用駆動モーターをグローバルに展開する日本電産 <6594> はEV関連の中核銘柄に挙げられる。同社が昨年7月に発表した中期戦略目標では2025年度に売上高4兆円(20年度は1兆6181億円)、高付加価値なモジュール製品開発を進め車載事業は1兆3000億円(同3581億円)を目指し成長を牽引する。直近では老舗工作機械メーカーOKK <6205> を傘下に収めることも発表した。

 また三井ハイテック <6966> は、EV向けモーターコアでは世界シェア6割超を占めており、業績拡大基調が続いている。更に、日産自を主要顧客とする自動車部品会社ユニバンス <7254> [東証2]の動向からも目が離せない。モーターやインバーター、車軸などをコンパクトに統合したEV向け駆動部品ユニット「eアクスル」事業に本格参入しており、25年の実用化を視野に入れて量産展開に向けた開発を強化している。

●田中化研、高度紙などリチウムイオン電池関連に追い風

 電池関連では、 リチウムイオン電池関連からは目が離せない。リチウムイオン電池は、正極、負極、セパレーター(絶縁材)、電解液などから構成されているが、特に電池の性能を左右する正極材を手掛ける田中化学研究所 <4080> [JQ]や戸田工業 <4100> 、セパレーターで実績の高いニッポン高度紙工業 <3891> [JQ]などの銘柄が注目されている。また、セパレーターでは正極と負極の接触を防ぎつつイオンを通す役割を担う樹脂製のフィルムも重要とされ、その需要拡大により製造装置で世界的シェアを持つ日本製鋼所 <5631> や芝浦機械 <6104> は受注が増え収益を大きく伸ばしている。

 足もとでは、EV向け需要が高まるなかリチウムイオン電池の正極材の主要原料である、コバルト、ニッケル、リチウムなど レアメタルの価格が軒並み上昇し、なかでもリチウムの価格はこの1年で約4倍になるなど最高値を更新している。また、この価格の上昇に対してテスラは一部の車載用電池をより安価なLFP(リン酸鉄リチウムイオン)電池へ切り替えることなどで利益を確保するとしており、今後の動向に注視したい。

●FDKなど全固体電池関連株の動向も要注目

 次世代EV向け電池では「全固体リチウムイオン電池(全固体電池)」が有力視されているが、トヨタは 全固体電池の搭載車を20年代前半に発売する計画としており、その動向に注目が集まっている。全固体電池は大容量化や長寿命化が難しいとされており、トヨタではバッテリーの搭載量がEVより少なくて済むHEVを一足先に市場に投入することでコスト面でのハードルを下げる。全固体電池関連では、村田製作所 <6981> 、FDK <6955> [東証2]、日本触媒 <4114> などの銘柄が挙げられる。

 更に、全固体ナトリウムイオン電池が脚光を浴びている。ナトリウムイオン電池の強みは、何と言っても価格が高騰するリチウムなどレアメタルを使用せず資源面の制約が少ないことだ。資源量の豊富なナトリウムや鉄を材料に用いており、また、ナトリウムイオン電池を全固体電池にすることで通常のものより性能に加え安全性が高められるほか、コスト削減も図れる。日本電気硝子 <5214> は昨年11月、世界初となるオール酸化物の全固体ナトリウムイオン二次電池の開発に成功したと発表。今後は25年を目標に、車載向けなどの実用化を目指す開発を更に進めるとしている。


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