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【特集】現代戦争の帰趨も握る、「サイバーセキュリティー」関連株を徹底マークせよ! <株探トップ特集>

トヨタが取引先へのサイバー攻撃により全工場の操業停止を余儀なくされたニュースを機に、サイバーセキュリティーの重要性が改めて意識されている。

―ウクライナやトヨタ取引先へのサイバー攻撃で改めて重要性が認識される―

 「サイバー攻撃」や「サイバーセキュリティー」が高い関心を集めている。ロシア軍によるウクライナ侵攻では、軍事行動と連動してサイバー攻撃が行われたという。また、経済産業省では国内企業や業界団体にサイバー攻撃対策を強化するよう呼びかけている。企業活動において、ウイルス感染となれば操業停止に追い込まれかねず多大な影響を受けるため、その対策強化の必要性が高まっている。

●日本の対ロシア経済制裁強化とともにサイバー攻撃が増加

 サイバーセキュリティーは不正アクセスを受け、電子情報が流出したり、改ざんされたりするといったことを防止する対策であり、近年はデジタル化の進展でサイバー攻撃が高度化していることから、その重要性が日増しに高まっている。

 複数のメディアによると、ロシアがウクライナ侵攻に踏み切り、日本政府が対ロシア経済制裁を強めるにつれて、省庁や自治体、国内企業へのサイバー攻撃が増えてきているという。サイバー攻撃をめぐっては、ウクライナ政府や銀行などのサイト、サーバーに大量のデータを送りつける「DDoS(分散型サービス妨害)攻撃」が相次いでいることが伝えられていた。これが、ウクライナを支持する他国にも波及し、更に手口などが悪質になってきているとされている。

 トヨタ自動車 <7203> は取引先の部品メーカーがサイバー攻撃を受け、その影響で3月1日に国内全14工場、28ラインの稼働を停止した。共同通信が3日に伝えた関係者の話によれば、英語の脅迫文に「このリンクにアクセスしないと情報を公開する」という趣旨の内容が含まれていたとされる。身代金要求型のコンピューターウイルス「ランサムウェア」の疑いが強いという。このトヨタの取引先がサイバー攻撃を受けたことについて、松野官房長官ら政府関係者は記者会見で「政府として実態を確認中」と述べている。

●岸田政権の「経済安全保障」でもサイバー攻撃対策が掲げられる

 こうしたなか、経産省や金融庁、総務省、警察庁など複数の省庁は1日に連名で、サイバー攻撃事案のリスクが高まっているとして、サイバーセキュリティー対策強化の注意喚起を発表した。2月23日に、経産省や金融庁が産業界に対してサイバーセキュリティー対策の強化を促す注意喚起を既に出していたが、国内企業などでサイバー攻撃を受けたとの報告が相次いでおり、一段の強化策の実行を促した。

 国内ではとりわけ、サイバー攻撃の影響がグループ企業や業界全体へと波及する、サプライチェーンへの攻撃の事例が相次いでいると、経産省や業界団体から報告されている。トヨタのような大企業はサイバーセキュリティーへの対策が比較的十分である場合が多く、その一方で、取引先や仕入れ先などの中小企業は十分ではないケースがあるため、ここをターゲットにするというものだ。したがって、1社だけの対策では不十分であり、業界や社会全体での意識向上、対策が求められる。

 岸田政権や自民党は「経済安全保障」の強化を掲げているが、その中にはサイバー攻撃への対策も含まれている。今回のトヨタの操業停止を受け、自民党幹部らから強化策の早期実行への発言や要望が相次いでおり、政府主導による大規模なサイバーセキュリティー強化策が打ち出される可能性もありそうだ。

●サイバーセキやトレンドが直近で急動意

 2月中旬に21年10-12月期決算の発表が一巡した後は、ウクライナ情勢の緊迫化も相まって、「サイバーセキュリティー」が投資テーマの中心となり、関連株への物色がみられている。投資家の不安心理を背景にマーケット全体が不安定となるなか、ウクライナ情勢が落ち着くまで、あるいは、次の決算シーズンまで「サイバーセキュリティー」関連株に物色の矛先が向かい続けることも想定される。

 直近で急動意がみられる銘柄として、ITbookホールディングス <1447> [東証M]、アスカネット <2438> [東証M]、セプテーニ・ホールディングス <4293> [JQ]、サイバーセキュリティクラウド <4493> [東証M]、トレンドマイクロ <4704> などが挙げられる。

 このうち、サイバーセキはクラウド型セキュリティーサービス「攻撃遮断くん」が注目されているが、7日には「製造業向けサイバー攻撃緊急対策パック」を開発したと発表。日本経済を守るという社会命題のもと、3月中の申し込み・利用開始限定で、このパッケージの初期導入費・初月月額費用を無償で提供するという。22年12月期は最高益を更新し、31%営業増益を見込んでいる。

 トレンドはセキュリティー対策ソフト「ウイルスバスター」が材料視されている。2月17日に開示した22年12月期業績予想は4%営業減益を見込んでいるとしたが、保守的であるとみられる。ただ、いずれも株価は高値圏にあるため、押し目買いスタンスで臨みたい。

●HENNGEは「HENNGEOne」への期待値が高い

 上記のほか、デジタルアーツ <2326> 、セキュアヴェイル <3042> [JQG]、No.1 <3562> [JQ]、FFRIセキュリティ <3692> [東証M]、サイオス <3744> [東証2]、テクマトリックス <3762> 、GMOグローバルサイン・ホールディングス <3788> 、フリービット <3843> 、ラック <3857> [JQ]、デジタル・インフォメーション・テクノロジー <3916> 、ニューラルポケット <4056> [東証M]、HENNGE <4475> [東証M]なども関連株として注目したい。これらはサイバーセキュリティー関連の事業を展開しているものの、株価の動意があまり見られていないものや、上昇一服となっている企業群である。

 このなかで、HENNGEはクラウドセキュリティーサービス「HENNGEOne」への期待値が高い。2021年10月に、より安全なファイル送受信、スマートフォンからのアクセスセキュリティーの強化、標的型攻撃からのメール保護を実現する3つの新機能をリリースした。これに伴ってライセンス体系を刷新し、高付加価値なセットプランを訴求しつつ、ライトユーザーも導入しやすいプランを設定しており、新規顧客獲得による業績拡大も見込まれるだろう。

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