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【特集】逼迫する電力需給、猛暑本番で「自家発電・節電関連株」が活躍へ <株探トップ特集>

政府による約7年ぶりとなる節電の呼びかけが波紋を呼んでいる。今夏を乗り越えても大きな山場となる冬に電力不足が見込まれるなか、安定供給を支える関連株への関心が高まっている。

―政府が約7年ぶりに節電の呼びかけ 安定供給を支える銘柄群に関心集まる―

 2015年以来約7年ぶりとなる節電要請が7月1日から始まっている。6月下旬に歴史的な猛暑が続いたことで、東京電力管内に連日の「電力需給逼迫注意報」が出されることになった。ロシアによるウクライナ侵攻を背景としたエネルギー価格の高騰などの問題も浮上するなか、猛暑の影響もあって今夏の電力需給は「綱渡り」となる見通しで、予断を許さない状況が続く。こうしたなか、「自家発電」や「節電対策」関連が投資テーマとして注目が集まっている。

●早すぎる6月の梅雨明け

 今年3月には既に、電力需給の逼迫で「大規模停電の一歩手前」となっていたが、電力需要が急増する梅雨明け後に向け政府は準備を進めてきた。老朽化で停止した火力発電所の運転再開などで7月や8月には電力の供給は十分としていたが、関東の梅雨明けが6月中という異例の早さとなったことが計画を狂わせた。政府が新設した「需給逼迫注意報」は6月26日から発令されたが、東京電力ホールディングス <9501> [東証P]と中部電力 <9502> [東証P]が折半出資するJERAが同月30日に姉崎火力発電所5号機の運転を再開したことでとりあえず今回は凌いだ格好。ただ、問題は冬だ。全国で瞬間的な需要変動に対応するために必要とされる予備率は7月と8月には3%以上の確保はできているようだが、冬場の来年1月には東京エリアでマイナスになる見通し。こうしたなか、岸田首相が14日の記者会見で、今冬に最大9基の原発を稼働させる方針を表明。また、ピーク時に余裕を持って安定供給が実現できる水準を目指し、火力発電の供給能力を追加的に確保するよう指示を出したが、稼働の行方が不透明ななか不安は解消されない状況だ。

●「サハリン2」の衝撃

 燃料の調達リスクも高まっている。ウクライナ侵攻で経済制裁を受ける資源大国ロシアだが、資源に乏しい日本に揺さぶりをかけた。6月30日、ロシアのプーチン大統領は日本企業などが出資するロシア極東の石油・天然ガス開発プロジェクト「サハリン2 」について、運営会社の資産をロシアが新たに設立する会社に移すことを定めた大統領令に署名した。電力需給の逼迫で大規模停電への懸念が高まっていたタイミングであっただけに衝撃が走った。これに対して岸田文雄首相は、「いきなりガス供給のストップにつながるというものではない」としているものの、サハリン2事業に「何らかの措置が行われる可能性がある」との認識を示した。

●省エネや自家発電で新たな商機

 今回の「サハリン2ショック」もあって、エネルギー安全保障などの観点から安定した電力やガスのエネルギー供給を求める声が高まり、原発再稼働に向けた思惑につながることとなった。ただ、「(最大9基の原発を活用しても)冬の需給が厳しい状況に変わりはない」という指摘もある。「安全最優先の原発再稼働」の方針のもと、審査には時間を要するのが現状だ。こうしたなか、太陽光などによる自家発電と省エネを組み合わせることで、オフィスビルや公共施設などの建物でのエネルギー消費量を実質ゼロに近づける取り組みが広がっている。

 これはZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)と呼ばれるもので、同分野に注力する企業としては三菱電機 <6503> [東証P]や、パナソニック ホールディングス <6752> [東証P]のほか、三機工業 <1961> [東証P]などが挙げられる。三機工の株価は年初来高値圏を更新したが、配当利回りが4%台半ばと高く指標面で依然割安といえる。政府はZEBの普及を後押ししており、延べ床面積2000平方メートル以上1万平方メートル未満の新築の場合、民間企業などに対して5億円を上限に空調、換気、給湯などの設備費について最大5分の3を補助する制度を設けている。今後もこういった政策支援を背景に、より広く浸透することが見込まれる。

●電気をためておける蓄電池関連に活躍余地

 電力需要が少ない時にエネルギーを蓄積し、逼迫時に放電してピークカットできる蓄電池 関連にも注目。蓄電池は、太陽光発電風力発電といった再生可能エネルギーのウイークポイントをカバーできるうえ、昼間ピーク時の需要を補うことも可能だ。関連銘柄では住宅用・産業用蓄電システムを提供する正興電機製作所 <6653> [東証P]のほか、蓄電池・バッテリーモニタリングユニット・空調機・屋外筐体をパッケージ化した蓄電システム「エフべス」を展開する古河電池 <6937> [東証P]などが挙げられる。また、ダイヤモンドエレクトリックホールディングス <6699> [東証P]は、傘下のダイヤゼブラ電機が8月から販売されるトヨタ自動車 <7203> [東証P]の住宅用蓄電システム「おうち給電システム」に製品を供給することで関心を集めている。ダイヤゼブラ電機は東電HDと共同で「多機能パワコンシステム」も開発しており、今後の動向が注目される。

●節電を促すサービスを提供するエネチェンジに存在感

 電力・ガス切り替えプラットフォームを展開するENECHANGE <4169> [東証G]も引き続き注目だ。同社は8日、これまで電力会社と個々に取り組んできた家庭向けデマンドレスポンス(DR)サービスを、電力需給逼迫の状況を背景に電力会社向けに拡販を開始したと発表。政府主導で進める家庭向け節電支援施策や東京都が進める家庭の節電マネジメント事業に対して、電力会社がスムーズな導入を検討できるようパッケージプラン「SMAP DRベーシックプラン」を用意。同社のサービスは冬に向けて導入が進むとの期待もあり株価を急動意させたが、エネルギー不足をテーマに今後もマーケットで存在感を示しそうだ。

●スマートメーター関連は大崎電

 電力使用量などが把握できるスマートメーター(次世代電力量計)も節電のカギを握る。スマートメーターは通信機能を生かして自動検針やリモート接続・切断、電力消費量の見える化などをはじめとするさまざまなサービスへの活用が期待されており、電気使用量の節約や消費者が生活スタイルに合わせたプランを選択することで電気代の節約につながるなどのメリットもある。関連銘柄では大崎電気工業 <6644> [東証P]が同商品で国内トップシェアを誇る。同社が5月に発表した中期経営計画では、25年3月期に連結営業利益40億円(22年3月期12億7700万円)を目指すとしている。また、電気自動車(EV)の急速充電器を手掛けEV軽量化ニーズに対応した接合技術を開発したダイヘン <6622> [東証P]も、小型変圧器などで高い実績を誇る。業績も好調で23年3月期営業利益予想は165億円(前期比16.3%増)と前期に続き最高益更新を見込む。

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