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【特集】冨田康夫【ストラテジー】秋の相場観特集_01 /PER13倍台は下げ過ぎ、景気対策で上昇加速

冨田康夫
日刊株式経済新聞 編集長 冨田康夫

 中国の上海総合指数が6月半ばから下落トレンドになっていたなか、8月の突然ともいえる中国人民元の切り下げは、世界同時株安の大きなきっかけとなった。中国が国内景気の先行き不安を自ら認めて、輸出拡大に向けてなりふりかまわず大きく舵を切ったと受け止められたからだ。

 東京株式市場では、6月に年初来高値をつけて2万1000円まであと一歩と肉薄するまでは、円安進行やインバウンド需要堅調に裏付けられた企業業績の改善や、公的年金の運用改革に伴う株式需給の好転観測、さらに自社株買いや増配など株主重視姿勢への評価が株価上昇の原動力となっていた。

 これが、中国景気の先行き不透明感の拡大や米金利上昇転換を前にしての不安感、さらにシリアなど中東からEU(欧州連合)諸国への大量の難民流出などがマイナス材料としてクローズアップされ株価が大きく下落した。

 ただ、16年3月期の企業業績見通しを冷静に判断すれば、日経平均採用銘柄の予想PERで一時13倍台まで低下しており、アベノミクスの上昇相場がスタートした2012年11月14日のPERとほぼ同水準となっている。この水準は、さすがに下げ過ぎ、割安と判断できる。

 9月に自民党総裁に無投票で再選された安倍晋三首相は、安保法案を可決させたことで、経済最優先の政権運営を表明。やや具体性に乏しいとの批判は一部にあるものの、アベノミクス第2ステージの目標として「1億総活躍社会」を示し、少子高齢化に歯止めをかけ、GDP(国内総生産)600兆円の達成を掲げた。これに向け、新しい3本の矢をとして、「希望を生み出す強い経済」、「夢をつむぐ子育て支援」、「安心につながる社会保障」を挙げている。今後は、日銀が「黒田バズーカ第3弾」となる量的金融緩和を打ち出す可能性もあり、財政出動を伴う景気対策を発動することにもなりそうだ。また、国民から関心を集めている「郵政3社」の新規上場は、低迷相場のなかにあっても個人投資家の投資意欲はかなり高まりそうだ。

 年末までには、少なくとも極端な割安感が解消されるPER15倍に相当する1万9000円水準の回復は想定できそうだ。

編集企画:株経通信(株式会社みんかぶ)   【秋の相場観】特集より

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