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【特集】江守哲【コモディティー】秋の相場観特集_03 /年末までに原油相場は8月安値を更新

江守哲氏
エモリキャピタルマネジメント 代表取締役 江守哲氏

 3カ月前に反発・上昇を予想した原油相場だが、残念ながらこの夏は安値更新の展開となった。中国を中心に新興国経済への懸念が強まり、石油需要の減退懸念が高まったことが、石油相場全体を押し下げた。筆者は米利上げが原油反発のカギになると指摘したが、その利上げが9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で見送られるほど、世界経済への懸念が高まったことは誤算だった。

 現状の市場環境が直ちに改善する可能性は低いといわざるを得ず、年末までに原油相場が8月安値を更新する動きを想定しておきたい。このように考えるのは、弱い需給要因に加え、過去の値動きパターンが背景にある。長い歴史の中で、原油相場は年間の安値を8月につけたことがない。そう考えると、10~12月に8月安値をさらに更新する可能性が高いことになる。10月中にも一段安となる可能性を念頭に入れておきたい。

 しかし、原油相場がすでにかなり割安な水準にまで下げているのも事実である。たとえば、筆者が注目している「金/原油レシオ」(金価格を単純に原油価格で割ったレシオ)では、すでに歴史的高水準である25倍超をつけている。このような高水準をつけるとき、原油価格は常に安値圏にある。つまり、原油相場はすでに相当の売られすぎになっているといえる。

 レシオが過去の平均値である16倍弱に戻れば、原油相場は理論上70ドルまで上昇することになる。もちろん、市場はこのように単純ではないが、この70ドルは産油国が財政均衡に必要な原油相場の水準よりまだかない低い。これらから、原油相場は一旦安値を更新するものの、その後は大幅な上昇に向かうと考えておきたい。

<プロフィール>

慶應義塾大学商学部卒業後、住友商事に入社し、非鉄金属取引に従事。1996年に英国住友商事(現欧州住友商事)に出向しロンドンに駐在。その後、Metallgesellschaft Ltd.、三井物産フューチャーズを経て、2007年7月にアストマックス入社。同社でファンドマネージャーに就任。アストマックス退社後、2015年4月にエモリキャピタルマネジメントを設立し、代表取締役に就任。ヘッジファンドを中心とした資産運用や株式・為替・債券・コモディティ市場の情報提供などを事業として展開。エモリキャピタルマネジメント・ホームページ:http://www.emoricapital.com/ お問い合わせ:info@emoricapital.com

編集企画:株経通信(株式会社みんかぶ)   【秋の相場観】特集より

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