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【特集】馬渕治好氏【日経平均急騰後に思惑交錯、どうなる6月相場】(2) <相場観特集>

馬渕治好氏(ブーケ・ド・フルーレット 代表)

―新型コロナワクチンの普及と企業業績で強弱観対立―

 31日の東京株式市場は、名実ともに5月相場の最終売買日となったが、日経平均株価は軟調な展開を強いられた。前週末に先物主導で600円高と値を飛ばしたが、週明けはその反動が出る格好となった。ただ、国内では緊急事態宣言の延長など新型コロナウイルス感染拡大への警戒感が拭えない一方、高齢者へのワクチン接種が進み始めたことは経済活動の正常化期待につながる。6月相場の展望について、第一線で活躍する市場関係者2人に意見を聞いた。

●「過熱感後退し戻り相場が続く」

馬渕治好氏(ブーケ・ド・フルーレット 代表)

 東京株式市場では5月11日から13日にかけて波乱相場に巻き込まれ、わずか3営業日で日経平均は一気に2000円以上の下落となった。しかし、ここでの大幅な調整で過熱感が後退し、その後は順調に戻り足に転じている。現在は2万9000円近辺で上昇一服となり2万8000円台に押し戻されているが、ここから値固めを経て再びじりじりと水準を切り上げる展開が想定される。6月相場で日経平均は上下に不安定な値動きを強いられる場面も予想されるが、基本的に強調展開で3万円大台をうかがう動きが見込まれる。

 国内に目を向けると新型コロナウイルスの感染拡大に対する警戒感は拭えず、緊急事態宣言の延長も重荷となっているが、一方でワクチンの大規模接種がスタートしたことはポジティブ材料だ。これを契機に欧米に比べ大きく出遅れていた日本株を買い戻す手掛かりとなりそうだ。中期的にみても国内経済、株式市場いずれも年後半にかけ回復傾向を強める方向が読める。3月期企業の21年3月期決算発表を総括して内容は悪くなかったといえる。また、22年3月期業績予想について思ったより強い数字が目立ったが、それでも全体観として一段の上方修正含みであると考えている。

 一方、米国株市場では、米10年債利回りが落ち着いていることなどを背景にひと頃のインフレ懸念が後退するなか、大勢上昇トレンドに変化は見られない。今週末4日に発表が予定される5月の雇用統計が注目されているが、失業率、雇用者数ともに好調な数字が見込まれる一方で賃金上昇圧力は低下し、インフレ警戒モードとはなりにくい。今後も米株高基調が継続するなか、6月相場では日本株も並行しての上昇が期待される。


(聞き手・中村潤一)

<プロフィール>(まぶち・はるよし)
1981年東京大学理学部数学科卒、1988年米MIT修士課程修了。米国CFA(証券アナリスト)。マスコミ出演は多数。最新の書籍は「コロナ後を生き抜く 通説に惑わされない投資と思考法」(金融財政事情研究会)。日本経済新聞夕刊のコラム「十字路」の執筆陣のひとり。

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