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【特集】桂畑誠治氏【再び急落、試練の5月相場とその後の展望は】(1) <相場観特集>

桂畑誠治氏(第一生命経済研究所 主任エコノミスト)

―米長期金利上昇でリスク回避、先行き不透明感一段と―

 週明け9日の東京株式市場は日経平均株価が一時700円近い急落で2万6000円台前半まで売り込まれる波乱展開となった。4月の米雇用統計発表を受け改めてインフレ懸念や米長期金利の上昇を警戒するムードが強まっている。「セル・イン・メイ」の格言通り5月はキャッシュポジションを潤沢にしておくべきか、それとも下げに買い向かうべきか。第一線で活躍する市場関係者2人に、ここからの相場展望と物色の方向性について意見を聞いた。

●「3月安値を視界に捉える可能性も」

桂畑誠治氏(第一生命経済研究所 主任エコノミスト)

 東京株式市場は目先厳しい局面に遭遇している。米インフレ懸念が強まるなか、4月の米雇用統計の結果は、事前のコンセンサス対比では特段ネガティブ材料視される数字ではなかったが、労働市場の逼迫した状態が改めて確認されたことで、米長期金利の上昇を誘発した。外国為替市場では日米金利差を背景に円安が進行しているが、世界経済の減速局面で輸出採算の改善はあっても需要そのものが落ち込むことへの懸念が強い。

 21年10-12月期と22年1-3月期を比較して世界の企業業績の拡大が急減速していることが指摘されているが、その観点では4~6月期も逆風環境が続くことは避けられない。原油市況については価格の高騰もさることながら、供給面での不足が経済や企業業績に与えるダメージが懸念されている。もっとも、これについてはパイプラインなどの供給設備が破壊されたわけではなく、行き過ぎた警戒論であるとは思う。

 目先のスケジュールでは今週11日の米CPI発表が注目されている。ここでは前年比での伸び率が鈍化することが予想されており、この結果が株式市場にどういう影響を及ぼすかがポイントとなる。3月のCPIコアが6.5%上昇だったが、4月は事前のコンセンサスでは6%となっており、仮にこの予測数値を上回らなければ、インフレのピークアウト感も意識されやすい。加えて発表後のFRB高官のコメントが、過度なタカ派姿勢の修正を示唆するものであれば、株式市場もこれを好感して本格的なリバウンドに転じる可能性もある。ただ、現状では楽観的な見方はしにくい状況だ。

 日経平均の向こう1ヵ月のレンジは、ウクライナ情勢が一段と悪化した場合に3月の年初来安値である2万4700円近辺を視界に入れるような急落も考えられる。一方、FRBの利上げに対する楽観的な見方が台頭すれば、米株主導で2万7000円台後半を試す場面も想定される。物色対象としては、米金利上昇が収益機会を高めるメガバンクなど大手金融機関。また、中国のロックダウンの動きが解消に向かうことを前提に、高配当利回りで円安も追い風となりやすい海運株が相対的に有利と考えている。


(聞き手・中村潤一)

<プロフィール>(かつらはた・せいじ)
第一生命経済研究所 経済調査部・主任エコノミスト。担当は、米国経済・金融市場・海外経済総括。1992年、日本総合研究所入社。95年、日本経済研究センターに出向。99年、丸三証券入社。日本、米国、欧州、新興国の経済・金融市場などの分析を担当。2001年から現職。この間、欧州、新興国経済などの担当を兼務。

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