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【特集】“割安感”強まるプラチナ、高い希少価値と価格低迷のなぜ <コモディティ特集>

minkabu PRESS CXアナリスト 東海林勇行

―尾を引くVW排ガス不正の影響、EV推進の流れも重荷に―

 プラチナ(白金)と金の比差が過去最大のマイナス幅を記録したことに加え、パラジウムとの価格が逆転し、プラチナの割安感が強まった。プラチナ・パラジウムは貴金属のなかでも産出量が少なく、レアメタルとして希少価値が高い。パラジウムは大幅な供給不足が見込まれていることが支援要因であるが、プラチナは需給がほぼ均衡しており、米連邦準備理事会(FRB)の利上げ観測でドル高に振れたことが圧迫要因になった。今回はプラチナのファンダメンタルズを確認し、投資妙味があるかどうかを探る。

●独VWの排ガス不正や英仏の脱内燃機関方針が打撃

 プラチナは自らは変化せず、他の物質の化学反応を促す特性を持っており、排気ガスを浄化する自動車触媒などに使われている。しかし、ドイツの自動車大手フォルクスワーゲン(VW)の排ガス不正問題が2015年に発覚したことを受けてディーゼル車離れが進み、需要が伸び悩んでいる。

 また、今年に入ってからはパリ協定離脱を発表したトランプ米政権に対抗し、仏・英政府が7月、2040年までにガソリン車・ディーゼル車の販売を国内で禁止する方針を打ち出した。大気汚染の悪化に歯止めをかける方針を示している中国政府は9月、2019年から大半の自動車メーカーに年間ベースで新エネルギー車の最低販売を義務付ける新たな規制を発表した。電気自動車(EV)への移行が進むと、プラチナの自動車触媒需要が徐々に減少していくことになる。さらに回収技術が発達しており、これまで自動車触媒として使われたものが新たな供給源となる。

●中国の宝飾需要は2013年がピーク

 中国商務省は9日、国慶節に伴う大型連休期間中の小売り・飲食業の売上高が1兆5,000億元(2,260億ドル)となり、1日当たり平均の売上高は前年比10.3%増と発表した。プラチナのもう一つの大きな需要先として宝飾品があり、中国がプラチナ宝飾品の最大の消費国となっている。

 ただ、同国の需要量を見ると、2013年をピークに減少している。宝飾業界が利益を確保するために宝飾品の純度を引き下げたことが背景にある。金宝飾品では加工しやすいこともあって24金から18金や22金に純度を落とし、デザイン性の高いジュエリーが若者の人気を集めている。プラチナ・ジュエリーでも同様の動きが見られ、過去2年間でPt999やPt990からPt950へのシフトが進んだ。

●南アの生産コストは大幅に低下

 プラチナは南アフリカが供給量の約7割を生産している。ただ、2008年のリーマンショック以降のプラチナ価格の下落や、労働コストの増加や設備の老朽化などで経営が悪化した。2012年以降は設備投資が大幅に減少し、生産が抑制されている。ドル建てプラチナ価格は2011年のピーク1,911ドルから2016年1月に810ドルまで下落し、10日時点は930ドルで推移している。価格が半値になっても鉱山会社が経営を維持できる背景には南ア通貨ランドが大幅に下落し、生産コストが低下したことがある。

 南アの生産コスト(減価償却費を含むオールインコスト)は2011年の1,569ドルから2016年は975ドルに低下した。減価償却費を含まないトータルキャッシュコストは868ドルだが、ここまで価格が下落すると、短期的には持ちこたえられても長期的には破綻する可能性が出てくる。生産コストから考えると、現在の水準は下げ止まる値位置であり、今後は新たな需要先が出るかどうかが焦点になろう。

(minkabu PRESS CXアナリスト 東海林勇行)

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