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【特集】“電気自動車”が握る「パラジウム」上昇トレンドの行方 <コモディティ特集>

minkabu PRESS CXアナリスト 東海林勇行

―騰勢継続はEV移行の進展次第、非鉄は世界経済堅調で上昇余地―

 パラジウムが高騰し、2001年2月以来の高値を付けた。また、非鉄金属も堅調に推移し、LME銅は2014年8月、アルミは2012年9月以来の高値を付けた。パラジウム、非鉄ともに工業用需要の占める割合が大きく、価格は世界経済の状況に左右される。2008年のリーマンショックや2010年の欧州債務危機を乗り越えるなか、パラジウム、非鉄相場はおおむね2016年初めに底入れしており、現在の上昇トレンドを維持できるのかどうかを検証する。

●パラジウムは自動車触媒需要の行方が焦点

 パラジウムは2016年初めの500ドルから今月に入り、一時1,000ドル台に上昇し、史上最高値1,095ドルが意識される。自動車触媒需要が2009年を底にして増加傾向にあり、供給が追い付かない状況が続いている。自動車触媒でパラジウムは主にガソリン車に使用され、2015年にドイツの自動車大手フォルクスワーゲン(VW)の排ガス不正問題が発覚し、ディーゼル車(自動車触媒にプラチナを使用)離れが進んだことも需要増加を促した。

 また、最近の動きでは米国のハリケーン被害で車両の買い替え需要が出たことも強材料となった。買い替えが一巡すると、調整局面を迎える可能性があるが、需給のバロメーターとなるリースレート(貸出金利)が今年に入ってから急上昇しており、大幅な供給不足という状況に変わりがなければ高値圏で堅調に推移が続くと予想される。

 ただ、フランスや英国、中国で脱内燃機関の方針が示されており、電気自動車(EV)への移行が進むと、パラジウムの自動車触媒需要はいずれピークを迎える。世界最大の自動車市場となった中国の販売動向を見ると、9月の販売台数は前年同月比5.7%増の271万台となった。このうち新エネルギー車(NEV)の販売は同79.1%増加した。1~9月の販売台数は合計が2,020万台に対し、NEVは39万8,000台と割合は低いが、中国は2019年から大半の自動車メーカーに年間ベースで新エネルギー車の最低販売を義務付ける新たな規制を発表しており、今後の移行のスピードを確認したい。

●非鉄は景気の行方次第で上昇余地

 非鉄金属は世界経済が堅調に推移し、上昇余地が残っている。銅、アルミ価格は2011年のピークから2016年の底入れに対し、半値戻しの水準にある。米連邦準備理事会(FRB)が9月にバランスシートの縮小開始を発表するなどし、金融政策の正常化が始まったばかりであり、今後、米国主導で世界経済の成長が進むと非鉄金属の価格を押し上げることになる。

 ただ、需要増加を主導するのは中国や新興国である。中国の経済成長率は2010年の10%から2017年第1四半期に6.9%に減速したが、先進国の2.0%を大きく上回っている。中国では5年に1度の共産党大会で新指導部が決定し、習体制の2期目がスタートする。

 一方、世界経済のリスク要因もあり、混乱すると、非鉄需要は一時的に伸び悩む。当面は北朝鮮やスペイン情勢の行方が焦点である。また、トランプ米大統領の保護貿易主義の行方や、英国の欧州連合(EU)離脱交渉なども確認したい。

(minkabu PRESS CXアナリスト 東海林勇行)

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