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【特集】金は低金利継続見通しで堅調も、上値伸ばせるか?! <コモディティ特集>

MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行
 の現物相場は、4月の米消費者物価指数(CPI)でインフレが示されたが、インフレは一時的との見方からドル安に振れたことなどを受けて堅調となり、1月8日以来の高値1916.16ドルをつけた。

 5月の米雇用統計は非農業部門雇用者数が前月比55万9000人増と、前月の27万8000人増から改善した。事前予想の65万人増を下回り、米連邦準備理事会(FRB)の早期の金融引き締め観測が後退したことから、金は調整局面の押し目を買われた。

 米国では新型コロナウイルスのワクチン接種が進み、各地で制限措置が解除され、経済活動が再開しているが、昨年初頭から労働力人口は350万人減少と労働力不足が続いており、景気回復を遅らせている。ただ、失業給付金の削減や育児環境の改善で復職が進むとみられている。

 金は5月17日に中長期の節目となる200日移動平均線(1845.46ドル)を突破し、テクニカル面で強気に転じた。しかし、景気回復見通しなどを背景に1900ドル台では金ETF(上場投信)に利食い売りが出ており、上値を伸ばせるかどうかが焦点である。

 当面は15~16日の米連邦公開市場委員会(FOMC)が注目され、危機対応からの脱却で量的緩和の縮小(テーパリング)などの協議が開始される可能性がある。また、10日には欧州中央銀行(ECB)理事会がある。パンデミック緊急購入プログラム(PEPP)による債券購入ペースの行方も確認したい。

●インドの主要都市で経済活動が再開

 インドでは新型コロナウイルスの変異株が猛威を振るい、一時期は1日当たりの新規感染者数が40万人を超えていたが、最近では約10万人と4月6日以来の低水準となり、7日には主要都市の経済活動が再開。モディ首相は全成人に新型コロナワクチンを無料で提供すると発表しており、ワクチン接種が進めば、景気回復期待が高まるとみられる。南アジアでの感染拡大で世界経済の先行き懸念が残っているが、インドが落ち着きつつあることは正常化に対する期待が高まる要因である。

●金ETFは1900ドル台で利食い売り

 世界最大の金ETFであるSPDRゴールドシェアの現物保有高は8日に1037.33トンとなった。5月26日に金価格が1900ドル台をつけてから利食い売りが出ており、25日の1046.12トンを直近のピークとして減少した。調整局面で押し目を買われる場面も見られたが、1900ドル台での利食い売りが続けば上値を抑える要因になるとみられる。

 一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、ニューヨーク金先物市場でファンド筋の買い越しは6月1日時点で21万3701枚(前週21万4642枚)と小幅に縮小した。前週の買い越しは2月23日以来の高水準となっており、高値での買いが続くかどうかも確認したい。

 金の独自材料では、6月に入り上海のプレミアムがディスカウントに転じたことが注目される。中国では経済活動の再開を受けて年明けに上海のディスカウントがプレミアムに転じて正常化し、4月の香港経由の金輸入量は52.8トンと前月の16.5トンから急増し、2018年6月以来の高水準になった。ただ、1900ドル台をつけたことで実需筋が高値での買いを見送っているなら上値を伸ばすのは難しくなりそうだ。

(MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行)

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