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【特集】プラチナは一段安も、金融引き締め強化・米リセッションを警戒 <コモディティ特集>

MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行
 プラチナ(白金)の現物相場は6月に入り、中国経済の回復期待や原油高によるインフレ懸念を受けて堅調となり、2ヵ月半ぶりの高値1032ドルをつけた。しかし、各国の中央銀行の金融引き締め見通しを受けてリスク回避の動きが出ると、戻りを売られて急落した。

 中国上海市が新型コロナウイルスの新規感染者の減少を受けて今月1日にロックダウン(都市封鎖)を解除し、回復期待が高まった。ただ、ゼロコロナ政策を継続するなか、感染者が出ると一部地域でロックダウンが再導入された。北京市でも制限措置の解除後にバーの集団感染が発生し、再び封鎖された。新型コロナウイルスを一掃するのは難しく、先行き不透明感が残っている。

 一方、欧米の高インフレを受けて大幅利上げ見通しが強まり、リスク回避の動きとなった。5月のユーロ圏の消費者物価指数(HICP)速報値は前年同月比8.1%上昇し、過去最高を更新した。前月の7.4%から拡大し、事前予想の7.7%も上回った。また、米消費者物価指数(CPI)は同8.6%上昇し、40年半ぶりの大幅な上昇率となった。事前予想や前月の8.3%上昇を上回った。ガソリン価格が過去最高となったことや、サービス価格が上昇したことが上昇率加速につながった。9日の欧州中央銀行(ECB)理事会では、資産購入プログラム(APP)終了と7月から利上げを開始する方針が示された。インフレが鎮静化しなければ、9月に大幅な利上げを行う見通しである。

 一方、今夜の米連邦公開市場委員会(FOMC)では75ベーシスポイント(bp)利上げが実施される可能性が高まった。米金融当局者らは6、7月の50bp利上げを示していたが、予想以上の米CPIを受けて一部投資銀行が利上げ予想を引き上げた。年末まで大幅利上げが続くとの見通しが強まっており、米経済の景気後退(リセッション)の可能性が高まった。リスク回避の動きが続くと、プラチナはレンジ下限となる900ドルの節目を割り込み、一段安となる可能性もある。

●ロシアとウクライナの戦闘継続で高インフレが続く見通し

 欧州連合(EU)は対ロシア追加制裁の第6弾を決定し、年内にロシア産原油の輸入を90%停止する見通しとなった。原油の供給ひっ迫を受けて高インフレが続くとみられている。ハンガリーは対象から除外され、パイプラインを通じた輸入を継続する。また、ウクライナの穀物輸出が滞っていることもインフレを促す要因である。ロシアとトルコが黒海に回廊を設置する案を協議したが、ロシアはウクライナが黒海沿岸の機雷を撤去する必要があるとしている。ただ、ロシアはウクライナ東部の要衝セベロドネツクを制圧しつつあり、戦闘を継続している。また、米国がウクライナに長距離ミサイルを供与することに対し、ロシアは新たな標的を攻撃すると警告した。一方、ウクライナのゼレンスキー大統領は、ロシア軍を侵攻開始前の状態まで撤退させることを目指している。西側諸国の武器供与でロシア軍を押し返せるとの見方もあり、停戦を協議するような状況ではない。

●プラチナ上昇は先物主導の買いが主因

 プラチナETF(上場投信)残高は13日の米国で36.37トン(4月末37.70トン)、英国で16.62トン(同16.05トン)、南アフリカで10.68トン(同11.01トン)となった。合計で1.09トン減少した。英国で増加したが、各国の中央銀行の金融引き締め見通しや景気減速懸念、ロシアとウクライナの戦闘長期化による不透明感を受けて投資資金が流出した。

 一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、6月7日時点のニューヨーク・プラチナの大口投機家の買い越しは5933枚(前週2363枚)に拡大した。4月26日時点の2357枚売り越しを当面の底として買い越しに転じた。900ドル台維持で買い意欲が強まったが、リセッションに対する懸念が出ており、再び売り圧力が強まる可能性がある。

(MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行)

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