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【特集】プラチナは軟調、欧州の景気後退懸念やドル高が圧迫 <コモディティ特集>

MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行
 プラチナ(白金)の現物相場は7月に入り、各国の中央銀行の利上げ見通しによる景気減速懸念が高まるなか、ノルウェーの海上石油労働者のストライキをきっかけとした欧州の景気後退(リセッション)見通しを受けて一段安となり、2020年11月以来の安値840ドルをつけた。6月のユーロ圏の総合購買担当者景気指数(PMI)速報値が51.9と前月の54.8から低下し、2021年2月以来の低水準となるなか、ストライキを受けて英国のガス価格が急騰し、景気見通しがさらに悪化した。欧州連合(EU)はロシアに対する追加制裁で同国産原油の禁輸を決定しており、エネルギー問題に対する懸念が強い。また、ラガルド欧州中央銀行(ECB)総裁が今夏に政策金利を2回引き上げる見通しを示しており、景気減速を促す要因とみられている。ECBはユーロ圏国債の分断化防止にも取り組んでおり、金利上昇で自動車販売の減少が続くと、プラチナの自動車触媒需要を抑える要因になる。

 一方、6月の米雇用統計で労働市場の堅調が示され、米国のリセッション懸念は後退した。ただ、パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長は、議会証言でインフレ抑制に強くコミットしていると述べており、積極的な利上げを受けて景気は減速するとみられている。今月の米連邦公開市場委員会(FOMC)でも75ベーシスポイント(bp)の大幅利上げが見込まれており、それによってドル高・株安が続けば、プラチナは軟調に推移するとみられる。

●中国のゼロコロナ政策継続もプラチナの圧迫要因

 中国政府がゼロコロナ政策を継続していることもプラチナの圧迫要因である。新型コロナウイルスの新規感染者の減少を受けて上海市などが6月にロックダウン(都市封鎖)を解除したが、7月に入ると、オミクロン株の一種で感染力が強いとされる「BA.5」の感染が確認され、先行き懸念が高まった。中国各地で制限措置が再導入されれば、プラチナの需要が伸び悩むことになりそうだ。

 また、ロシアとウクライナの戦闘が長期化していることも景気の先行き懸念となる。ロシアはウクライナ東部のルガンスク州を制圧した。西側諸国の兵器がウクライナ軍に行き渡ればロシア軍を押し返すとの見方もあるが、現時点ではロシア軍が優勢となっている。米国が新たな軍事支援を決定するなか、ウクライナのゼレンスキー大統領は南部奪回を命令しており、今後の戦闘の行方を確認したい。

●NYプラチナで大口投機家が売り方に転じる

 プラチナETF(上場投信)残高は11日の米国で36.49トン(5月末36.53トン)、英国で15.15トン(同16.11トン)、南アフリカで10.73トン(同10.65トン)となった。合計で0.92トン減少した。南アで安値拾いの買いが入って増加したが、景気後退(リセッション)懸念や各国中銀の利上げ見通し、リスク回避の動きなどを受けて投資資金が流出した。

 一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、7月5日時点のニューヨーク・プラチナの大口投機家の売り越しは2734枚(前週1306枚)に拡大した。6月7日の5933枚買い越しをピークとして売り圧力が強まり、売り方に転じた。4月26日と5月3日も売り方に転じたのち、割安感から短期で買い戻された。しかし、今回は景気後退見通しが強まっており、米FRBの利上げが停止され、景気見通しが改善するまで売りが続く可能性がある。ただ、今夏の南アの鉱山会社の賃金交渉の行方も焦点であり、ストライキで供給不安が高まるようなら買い戻し主導で急伸する可能性も出てくる。

(MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行)

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