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【特集】米国は追加増産を要請も、結果見えるOPECプラスの判断 <コモディティ特集>

minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司
 バイデン米大統領が中東を訪問した。人権問題を除いて目を引くような報道はなかったが、産油国の舵取り役であるサウジアラビアに石油の増産を要請した。米国務省でエネルギー安全保障担当シニアアドバイザーを務めるアモス・ホッホシュタイン氏は、今後数週間で主要産油国のさらなる措置を確信しているという。来月3日の石油輸出国機構(OPEC)プラスの閣僚会合で9月以降の追加増産を合意することを米国は期待している。

 増産要請に対するサウジの返答は、不足しているならば増産する、である。OPECが先週公表した月報によると、経済協力開発機構(OECD)加盟国の商業在庫は減少が一巡しており、年初からやや増加傾向にある。5月は26億8000万バレルまで増加した。米国を中心とした国際エネルギー機関(IEA)加盟国の石油備蓄放出が民間在庫を押し上げていることが在庫不足を緩和している。米ホワイトハウスは低下しているガソリン小売価格について、米政府の対応が奏功したと述べた。

●景気後退で供給ひっ迫感は後退

 主要国の景気見通しが悪化していることは供給ひっ迫感を後退させ、先月以降のブレント原油やウェスト・テキサス・インターミディエイト(WTI)先物に調整安を促した。主要国の経済が落ち込んでいることを示唆する経済指標は現時点で多くはないものの、景気に対して先行性のある消費者あるいは企業マインド指数が低下しており、景気後退は避けることができないだろう。リセッション懸念が現実となった場合、低迷する主要国の石油需要はさらに減少し、供給不足を後退させる。

 OECD加盟国の商業在庫にインドや中国など大口消費国は含まれておらず、ここから多くを判断することはできないが、足元で供給が不足しているようには見えない。また、インフレ高進や金融引き締めを背景に主要国の景気後退はおそらく不可避であり、いずれ石油需要が縮小することを踏まえると、少なくとも供給不足が強まる可能性は低い。サウジアラビアやロシアを軸としたOPECプラスが追加増産を見送る根拠はいくらでもあるのではないか。世界的に異様な中国のゼロコロナ政策がいつまで続くのか見通せないことも増産見送りを後押しする。中国共産党は全体主義をより強固にするためにコロナを利用しており、終着点が不明である。

●レームダック化するバイデン政権

 そもそもサウジアラビアはバイデン政権の増産要求を受け入れる必要があるのだろうか。バイデン米大統領の低迷する支持率を見る限り、政権はすでに末期的である。ガソリン小売価格が多少下がったとはいえ、11月の米中間選挙に向けて巻き返しは難しいだろう。レームダック化する可能性が高いバイデン米大統領の機嫌を取る必要はない。米中間選挙後の2年間で、十分な経済政策ができずに米経済が沈み、石油需要が落ち込むリスクもある。脱炭素社会の前進による石油需要の減少も考慮しなければならない。来月3日の産油国会合に注目するとしても、今のところ結果は見えているのではないか。

(minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司)

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