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【特集】日経平均急反騰は本物か、プーチン大統領の野望成就で変わる未来図 <株探トップ特集>

ロシアがウクライナに軍事侵攻を開始し緊張感が高まるなか、25日の東京市場では日経平均が500円超の急反発をみせた。果たしてこの反騰は本物か。

―キエフ陥落の可能性高まる、NATO動けずロシアの思惑図星で嗤う中国―

 週末25日の東京株式市場は、主力ハイテク株を中心に買い戻され日経平均株価は6日ぶりに大きく切り返しに転じた。前日にフシ目の2万6000円台を割り込み1年3ヵ月ぶりの安値水準に沈んだが、きょうは朝方から半導体関連などこれまで売り込まれていたグロース株に投資マネーが向かった。終値は505円高の2万6476円と満を持しての大幅高となった。

●アンワインドで一変する相場の風景

 前日はロシアのウクライナ侵攻を受けて世界同時株安の様相を呈し、ロシアの主要株価指数は一時50%を超える大暴落をみせたが、この流れを堰(せ)き止めたのが米国株市場だ。NYダウナスダック総合株価指数、S&P500指数の主要3指数は朝安後に下げ渋る展開となり、特にハイテク株比率の高いナスダック指数は取引後半に買い戻しが加速、400ポイントを超える急反騰をみせた。ここまで連日の株価下落過程で、ロシアによるウクライナに対する軍事攻撃はマーケットに織り込まれていた部分も多く、売り一巡後は空売り筋などのアンワインド(巻き戻し)が一気に加速した。そして、東京市場もこの米国株市場の動きに歩調を合わせ、朝方からハイテク株などにショートカバーが入り日経平均を押し上げる格好となった。

 ロシアによるウクライナ侵攻はある意味、あっけないくらいに大勢が決してしまう可能性が出てきた。ウクライナとロシアの戦いは圧倒的な力の差があり、ロシア軍は早々に首都キエフに近い空港を制圧し、キエフの北に位置するチェルノブイリ原発も占拠した。北大西洋条約機構(NATO)加盟国はロシア側の攻撃抑止に向け、米軍の7000人規模の増派など万全の体制を敷くが、NATO加盟国ではないウクライナを軍事的に直接支援することはしない。ロシアのプーチン大統領もそこは心得ており、バイデン米政権にすれば老獪なプーチン大統領に手の内を既に見切られているというような印象も強い。

 一連の経済制裁も、銀行間の国際決済ネットワークである「SWIFT」からロシアを排除する方針は見送るなど腰が引けた状態となっており、ロシアにすれば声を荒らげるバイデン米大統領とは裏腹に、打ち出される追加制裁はかすり傷程度にしか見ていない可能性もある。

●核保有を脅し文句に問答無用の進撃

 これについて松井証券シニアマーケットアナリストの窪田朋一郎氏は、「米国の威信失墜であり、これは今後の国際情勢にも大きな影響を与える。ここでキエフを難なく陥落させれば、今後ウクライナだけでなくNATOに加盟していない東欧諸国に触手を伸ばす可能性も否定し得なくなる。また、バイデン与し易し、とみれば、近い将来に中国も“我が国は強力な核保有国の一つ”というプーチン大統領の言葉をリフレインして台湾に侵攻するという状況も引き起こす。事実、今回のロシアのウクライナ軍事攻撃に対し中国側は“ロシアは自身の判断とその国家利益に基づいてその外交と戦略を進めている”とし、いわゆる侵略ではないとの認識を公にしている」と指摘する。米中摩擦が先鋭化するなか、中国とロシアの利害は一致する。グルになってというと言葉は悪いが、両国連携で台湾海峡との二面作戦で攻められては、バイデン大統領には荷が重過ぎる。

●ロシアによる軍事侵攻は織り込んでいた

 一方、今回のウクライナ問題が株式市場に及ぼす影響についてはどうか。ロシアへの経済制裁によって世界経済にもデメリットが及ぶ可能性があるだけに、マーケット目線で気になるところだ。ブーケ・ド・フルーレット代表の馬渕治好氏は「ウクライナ情勢に限れば、あまり日がかからずに現在の最悪の情勢を織り込み、世界の主要国株指数は下げ止まるとみている」という意見だ。「一般的な論調としてはロシアが軍事侵攻することはないという見方が支配的だったが、マーケットにすれば(軍事侵攻が実際に行われたことは)驚愕の事態ではなく、ここまでの急落で織り込んできた」とする。ただし、馬渕氏はウクライナ情勢に関係なく、米金融政策の正常化と「中国リスク」を背景に3月ごろに日経平均は2万5000円前後まで下落するとの見方を示している。

●ウクライナ情勢ではなく内需に目を向ける

 ウクライナ情勢に振り回され、岸田政権下で国内に買い材料が見当たらないなかにあっても全体相場が内需株主導で浮上するチャンスがあるとみているのが、auカブコム証券マーケットアナリストの山田勉氏だ。「ロシアに対する制裁による世界経済への悪影響は極めて限定的と思われ恐れる必要はない」と言い切る。その一方で、「国内では材料難だがポストコロナの流れに乗って、消費周辺株には資金が流れやすくなる。そのなか原油価格高騰に対応して、岸田政権からガソリン価格の補助金上限を1リットル当たり最大25円程度にする方針が示されており、これがリオープン(経済再開)関連にポジティブに作用する可能性に期待したい」という見解だ。

●底入れの感触なし、3月上旬に再び試練も

 もっともきょうの段階では、たとえ日経平均が500円を超える上昇を示し、高値引けに近い形で2万6000円台半ばまで水準を切り上げたとはいえ、自律反発の領域を出ていないことは確かだ。下向きの5日移動平均線にも届いておらず、先物主導の単発的なリバウンドに遭遇しただけで、底入れと判断することはできない。これまでにも週末に空売り筋のショートカバーが入るケースでは、CTAによるAIアルゴリズム売買の影響により高値圏で引けるパターンが多いが、これは連続性のある戻りトレンドに転じることを示唆するものではない。

 当分は下押した場面で拾い、上昇局面では売るという機動的な売買に徹するところであろう。「前日の米国株の急反騰は、ウクライナ有事を理由に米国の利上げピッチが緩む可能性が買い材料のひとつに挙げられていた。このような“いいとこ取り”の材料は根拠に乏しく、FRBの利上げスタンスに基本的に変化はないと思われる。3月相場は中旬開催のFOMCに向けて再び下値を試す展開になって全く不思議はない」(前出の窪田氏)という見方に現時点では説得力がある。

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